33 ページ35
No side
『だい、じょぶ……』
「て、天女さま!!」
少しだけ笑みを浮かべ、そのまま項垂れた天女。
きり丸としんべえが呆然と立ち尽くす中、真っ先に駆け寄ったのは、保健委員会の乱太郎だった。
「大丈夫ですか!聞こえますか!」
衝撃を与えないよう慎重に上半身を支え、大きな声で呼びかける。
しかし、天女は苦しげな呼吸を繰り返すだけで、返事をすることはなかった。
「た、大変だ……」
乱太郎の頭の中が真っ白になる。
きり丸としんべえもその場に駆け寄り、顔面蒼白の乱太郎に問いかけた。
「この人って、て、天女様……だよな」
「うん……」
「そうじ、ずっと頑張ってたよね……」
「うん……」
三人は数日前に天女が掃除をしているところに出くわし、今日も遠くから様子を見ながら、手伝おうか悩んでいたところだった。
天女は怖いと教えられていても、まだ幼い三人は必死に仕事をしているような彼女をとても悪い人だとは思えなかった。
「と、とにかく保健室に運ばなきゃ!」
「でも、俺たち三人じゃ……」
いくら女性とはいえ身体は天女の方が大きいし、彼女は竹刀も背負っている。
けれどこのままこの状態にしてしまえば、命を落としてしまうかもしれない。
どうしようと三人が途方にくれたその時、三人を照らす日差しを、ひとつの影が遮った。
「……おやまぁ、どうしたの、その人」
「「綾部喜八郎先輩!!」」
助かった、そう言わんばかりの三人の声が揃う。
普段ならばちょっと困った先輩である彼が、今の三人にとっては救世主だった。
「て、て、天女さまが!」
「俺たち陰から見てて、それで大丈夫って、」
「でも三人だけで、竹刀があるし、」
「ちょ、落ちつきなよ君たち」
気が動転してるのか、それぞれがバラバラに喋る三人。
とても理解できそうにないその説明だったが、喜八郎は小さく頷いてから天女に近づいた。
「よっこらせっ、と。乱太郎、竹刀持てる?」
「え……は、はい!」
天女を助けることにすんなりと協力してくれたことに、乱太郎は驚きながらも竹刀を受け取る。
喜八郎は軽々とその身体を持ち上げると、保健室の方向へと歩き出した。
その後を、乱太郎達も追う。
「……そういえば先輩、いつももってる踏鋤はどうしたんですか?」
しんべえがふと問いかけると、暫しの沈黙の後、喜八郎は呟いた。
「……別に。今日は踏子ちゃんが調子悪いだけ」
177人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時