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『……っ!』


咄嗟に目を瞑って感じたのは、頬を伝って水滴が流れていく感覚。

ゴトンと音を立てて、私の膝下に湯呑みが落ちた。


_沈黙。



「え、僕……そんなっ、ごめんなさいっ!」



最初に口を開いたのは、お茶を持ってきた彼だ。


相当天女が恐ろしいのか、全身をこれでもかという風に震わせて、この世の終わりのような表情を浮かべている。


そんな姿を見て、呆然としていた私も流石に我に返った。


『……あっ、いえ、大丈夫ですよ』

「えっ、でも……」


水滴を乱暴に拭い、立ち上がる。

オロオロと立ち尽くしている彼に駆け寄って、私からも声を掛けた。


『そちらこそ、かなり派手に転んでましたけど……どこか痛めてませんか?』


彼は驚いたように目を見開いて、首を振る。


「えっ、あ、僕は全然……だけど、あなたはこんなに濡れて」

『いや……あれ?』


平気です、そう言いかけて私はハッとした。


……確かに、言われてみればおかしい。

お茶、すなわち熱湯を被ったはずなのに、どこもなんともないのだ。


疑問に思った私は、すぐに手や身体を目視で確認して、それから床にも広がった水溜りに触れた。

そして、思わずあっと声を上げる。


『え、これ……ぬるま湯!?』


……熱くない。

全く、熱くなかったのだ。


「えっ、あれ!?本当だあ」


しかも、お茶を持ってきた当の本人でさえ心当たりはなし。

私達は、思わず顔を見合わせる。


『あなたが持ってきたんじゃないんですか?』

「そうなんですけど、あれはヘムヘムに持っていってって言われて……」

『ヘムヘムって、あの座る猫?』

「ヘムヘムは犬です」

『え』


……とまあ、いつの間にか話が脱線してきたところで、後ろから肩を叩かれ、私は振り返った。

そこにいたのはそれまでずっと黙っていた騙し絵の顔の人で、真っ直ぐにこちらを見ている。


「あなた、採用です。」

『はい?』


言い放たれた言葉に、自らの耳を疑った。

その人は、言葉を続ける。


「申し訳無いのですが……少し試す為にこのような事をさせて頂きました」

『た、試す?』


私が聞き返すと、その人は小さく頷いた。


結論からして、これはその人の……吉野先生の、いわば"賭け"だったらしい。

私の人となりを見極める為に、わざと前の"天女様"ならば怒り狂うようなことを行ったのだという。



「……でも、君は違いましたね」


そう呟いて、微笑む吉野先生。

私はようやくほっと息をついた。

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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時

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