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重症なのは?5 ページ9

「知念さんの付き添いの方ですね。」
 声をかけられ、立ち上がる。医師から、見た目ほど怪我は酷くないこと、発熱と若干の貧血があるため安静にする必要があること、頭を打っているのでこの後いくつか検査をすることが伝えられた。
「適切な応急処置のおかげで出血も最小に抑えられました。ありがとうございます。」
「いえ、そんな。こちらこそありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。」
 ひとまずよかった。深々と頭を下げて医師を見送ると、ずるずると崩れ落ちるようにベンチへ腰かける。同じように心配しているであろうメンバーに連絡を入れる。間髪入れずに既読になるのを確認して、苦笑する。
 直後、大ちゃんからの着信が入る。
「もしもし、藪君?連絡ありがと。とりあえず安心したよ。こっちはさ、やっておくからさ、そこにいてあげて。俺らも終わり次第そっち行く。確認事項は次回共有しよ。」
「りょーかい。みんな頼んだ。」
中断していたリハを続けるとの連絡とともに、同じことを頼もうと思っていたことに、15年を共にしてきた仲間との信頼関係を感じる。考えることは一緒だ。やり残している部分には、特に特別な演出はない。自分たちなら、その場でフォローし合える。それより、罪悪感でいっぱいであろうかわいい末っ子を、処置から戻ってきた時に、一人ぼっちにしたくない。
 やれやれ、何歳になっても俺たちはつくづく侑李に甘いのだ。

「ほれ。言い訳なら聞いてやるぞ。」
「・・・ないです。すいませんでしたぁ。」
 検査を終えたというので、病室にいくと、悪さがばれた後の子どものようにばつの悪そうな顔で点滴につながれていた。作っていた怒った表情を崩し、笑顔でベッドサイドの椅子に腰かけると、
「まあ、お説教ならあとで大ちゃんからたっぷりとね。いつから調子悪かったの?」
「う〜ん、本当に最初はなんでもなかったんだけどね。無音ダンスの後の照明のチカチカが
 ちょっとくらってしてさ…。その時はすぐおさまったから平気だと思ったのよ。」
「おまえももう歳ってことかー。」
「うわぁ、まじかー。おいたんに言われたらおしまいじゃんか〜。」
顔も唇も真っ白だけど、減らず口を叩ける元気はあるようで安心した。

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作者名:misto | 作成日時:2023年10月30日 20時

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