重症なのは？３ ページ7
「ちょ、知念！！」
「知念が落ちた！誰か救急車でください！」
めったに聞かない伊野尾の切羽詰まった声と大ちゃんの指示が会場に響いた。トロッコから下りて全速力で駆け寄ると、どうやらステージから落ちたらしい侑李が起き上がろうとしていて、俺と同じように駆けつけたスタッフやメンバーに取り囲まれていた。
「いてててて…。」
「知念、動くなって！すげえ血出てるから！」
「え、うわ、ほんとだ。ごめんなさい、汚れちゃいました？」
出血はかなりあるが、意識ははっきりしているようで、支えている若いスタッフに申し訳なさそうにしていた。
「ごめん、ちょっとどいて。侑李、傷、この辺？」
俺は近くにいた誰かを跳ね飛ばす勢いで侑李のすぐ横に跪く。背中を右手で支え上半身を少し起こすと、その背を自分にもたれさせた。左手では、持っていたタオルで傷を力強く抑えた。侑李は、声にならない声をあげ、下唇を強く噛んで痛みに耐えた。悪いな、でも仕方ない。少しでも出血を抑えないと。
「侑李、痛いところ、頭だけ？他は血出てない？」
「え、えっと…、うん、たぶん…。」
それを聞いて、伊野尾が抑えたトーンで救急車を手配しているスタッフに指示を出す。
「頭から出血がある。一応AB型のRhマイナスだって伝えて。」
視界の端でそれを確認すると、気付かれないように細く息を吐く。
「あぁー、びっくりした。なぁ、侑李もびっくりしたよな。深呼吸しようか。」
「ごめんね、驚かせて。うん…。」
侑李はRhマイナス。激レアさんだ。出血を伴うけがをした時には、いつだって肝を冷やす。本人も、こちらが意図するところを理解しているので、おとなしく深呼吸をし始めた。有岡がなんとも言えない顔をしていることに苦笑しながら、
「はい、みんなも一回落ち着こうか。ハイ一緒に深呼吸〜。」
といって、その場の混乱を一旦鎮めることに努める。
「どうせ救急車待つしかできないからね。」
�睫擇�そう続けると、おろおろしていた若いスタッフ達とともに、大ちゃんも詰めていた息を吐いた。そして裕翔に耳打ちをして、スタッフを数人連れて会場を出ていった。救急隊の誘導に回ってくれたのだろう。
涼介はすぐ隣にしゃがみ、寝かしつけるみたいに胸からお腹にかけてをトントンしながら、やんわり話しかけている。
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作者名：misto | 作成日時：2023年10月30日 20時
