ベイビーアイラブユー (ページ6)

今日:6 hit、昨日:6 hit、合計:17,156 hit

ふたりぼっち【長尾】ページ6

特別教室しかない北校舎の三階にある空き教室は、人っ子一人来うへん穴場。

今日も今日とて、昼休みのそこでぼっち時間を満喫しようとお弁当を開けたとき、

「あ、A。やっほ～」

『やっほ～ちゃうねん』

ガラガラ、とドアが開く音と共に呑気な声が響いて、ちょっとため息が出た。

ぴったりドアを閉めきった彼は、窓際の席に座る私の隣に、お弁当の入った手提げと水筒を置いた。

こないだまでお昼はこの教室で私一人で過ごしていたはずやのに、いつからふたりぼっちになったのか。

『ほんまに毎日来るなぁ、長尾くん』

「ええやん！ここ静かやし、居心地良いんやもん」

そう言って人懐っこい笑みを浮かべる長尾くんは、みんなの人気者。

サッカー部で運動が出来て、(勉強はちょっと分からんけど)明るい性格やから友達も男女問わず多いし、特に仲良しなのは隣のクラスの道枝くんやけど、この二人はまぁ揃いも揃ってイケメンやし。

なんせモテ要素の塊の人やから、私みたいな存在感薄めの人間とは、たとえ同じクラスでも関わるはずがない人やった。

……関わるはずがない人、やってんけど。

“わっ！ごめん、匿ってください！！”

追っかけの人ら(なんと長尾くんのファンクラブなるものが存在するのだ)から逃げてる最中、この空き教室を見つけて走り込んできた彼が、私にびっくりしつつもそう叫んで飛び込んできて。

そんな大騒動があったのは、1ヶ月ぐらい前のこと。

『長尾くんって、案外一人でおんのも好きやんな？』

まぁ、今二人やけど。

そう思いつつ聞いたら、彼は「せやな～」と頷きながらプチトマトを口に放り込む。

「Aもやろ？」

『うん、そうやね』

「まぁ、今二人やけどな」

『……うわ、思考回路かぶったわ』

「ほんま？」

おんなじこと思ってた、って言えば、けらけら楽しそうに笑う長尾くん。

……笑顔眩し。直視できんわ。

『二人やけど、私この時間結構好きやで』

「そ、…………うん」

『え、なんの間？』

お弁当に視線を落としながら言ったのに、明らか変な沈黙があったから逸らした視線をまた彼に戻してしまう。

机を見つめたまま何度か瞬きをした長尾くんがこっちを見て、目が合った。