重い男【西畑】 ページ4
自分でも、愛が重い自覚はあった。
『……ちょ、大ちゃん重い！』
「え？」
なんて心の中で思ってたはずやのに、そんなストレートな。
てか心読まれた？声に出てた？
ちょっとショックを受けつつもびっくりして、目の前の女の子の顔を見下ろす。
ちっちゃい頃からずっと見守ってきた、可愛いかわいい女の子。
「俺重い？……やんなぁ、俺、やっぱ重いよなぁ」
『……ん？何の話してる？私今体重のこと言ってんねんけど』
え、体重？
二人とも困惑したような視線がぶつかり合う。
すると彼女が、その華奢な肩にのしかかっていた俺の腕を重そうに持ち上げようとした。
「あぁ！ごめん！」
やっと話が繋がって、慌てて腕をどかす。知らん間に体重かけてもたれてしまっていたらしい。
体を離して謝ると「ええよ〜」とすぐ許してくれたAは、俺から目を逸らしてまたスマホに視線を落とした。
……全然俺に興味ないやん。
思わずむっとして、さっきその肩に体重をのせてちょっかいをかけ始めた理由もこれやと思い出す。
最近お互い個人で忙しかったから、今日グループの撮影で久しぶりに会えたっていうのに！
ここは楽屋やからAが座るイスの前にでかい鏡があって、何となくそれを見たら彼女の背後に立つ俺と目が合った。案の定不満そうな顔をしている。
どうしよ、もっかい体重かけたろかな。
『……大ちゃ〜ん？二回目やなぁ〜』
「やってAスマホばっかりやん。せっかく久しぶりに会えたんやからさぁ！」
『やけど私今日刊書いてんの！締め切りやばいの！』
「仕事と西畑どっちが大事なん？！」
『仕事や！！！』
即答すぎてぴし、と固まってしまう。
お決まりの台詞みたいなんをするする出して言い合っていたら、「痴話喧嘩すんなら他所でやれ！」と向こうのソファーからまぁまぁの声量で飛んできた丈くんのツッコミ、というかお叱り。
やのに、それすらも遠く聞こえるほどの衝撃を受けている俺。
……仕事なん？仕事の方が大事なん？まぁそうやけど、ほんまに！？Aにとっての俺はそんなもんなん？！！
「大ちゃん。重い男は嫌われんでぇ〜」
脳内大騒ぎで目かっぴらいてたら、はっすんと鏡越しに目が合って、諭すように言ってきたと思ったらひゃっひゃっと独特の引き笑いで笑った。
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作者名：ぽて子 | 作成日時：2023年6月23日 19時
