ベイビーアイラブユー (ページ11)

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さっきまで微妙に気まずかったのに、心配そうにテキパキと冷たい麦茶やら保冷剤やらを用意してくれた。
大橋くんがうちわで扇ぐ風に当たっていたら段々体温も下がってきて、ずっと髪の毛は濡れたままやったから今度はくしゃみが出た。

タオルで適当に拭きながら今度こそ立ち上がろうとする。

『ありがとう、ドライヤーするわ』

「うん、あ、ちょっと待っててください！」

首を傾げながらも言われた通り待っていたら、彼は脱衣所からドライヤーを持ってきた。
「俺が乾かすわ！」なんて宣言した瞬間熱風が吹き付けて、ゴーッとドライヤーの音に全部かき消されていく。

……この状況は、一体。
付き合っている訳でもないのに、6歳も年下の男子に髪を乾かしてもらっているアラサー女の図。

何やろ、お詫び的な？

そういうことにして受け入れたら、髪が半分乾く頃にはいつの間にかぶり返した眠気がもう限界を迎えていた。
こっくり頭が揺れたら気付いたのか、風の音が一瞬弱まって優しい声が聞こえる。

「Aさん眠たい？寝てええよぉ」

眠すぎて返事も出来ひんかった。
のんびりしたトーンの声は何だか安心する。

……なんていうか、幸せ。
ぼんやりそう思った。

明確な役割分担はあるけど、ご飯は一緒に食べる。
髪は乾かしてくれるけど、敬語は抜けきらへん。

同居人以上、家族未満みたいな、ますます謎な私たちの関係は、たぶん世間から見ると普通じゃない。
でもそれでよくて、それが心地いい。

そんな結論を出したら満足して、意識はまた夢の中に沈んでいった。