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後頭部を押さえながら窓を開けた紫耀くんと、さっき振りの対面。『車あっちに停めた方がいいよね?』と苦笑い。「そうだね」と答えると、勢い良くハンドルを切り、ひとけのない裏路地に停車した。CM撮影中では到底有り得なかったいつも通りの会話も胸が痛んだ。何を言われるのか、これで最後なのか、もう会えないのか、……あぁ、もう。さっきまで合わせられなかった視線は暗闇では簡単に交わる。落ち着け、深呼吸。息をするのも忘れていた。そのうちエンジンが止まる音がして、車から降りてきたスーパーアイドル。
『出てきてくんないかと思った』
「………私だって出たくなかったよ」
『そんな言い方しないでよ』
静かに笑って俯く仕草さえ眩しくて。久々に面と向かって話している今が、やっぱりどこか信じられなくて。『乗って』と誘導された後部座席。芳香剤の匂いが変わっていることに気づく私はただの変態か。真っ暗な車内で紫耀くんは運転席ではなく、あろうことか後部座席の私の隣に座ってきた。……ちょっと待って、待ってよ、ねえ。
………心臓の音が聞こえちゃうよ。
『Aちゃん、』
「…………はい、」
『今から言うことは俺のただの独り言』
「…………え、」
『聞きたくなかったら聞かなくていいから、ここから降りてもらっても構わない』
あぁ、ダメだ。もう戻れない。
例え間違いだったとしても、私はこの人が好きだ。
好きで好きで堪らないんだ。
振り回されたって、報われなくたって、叶わなくたって、ただあなたが好き。
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??????(プロフ) - ものすごく既視感あるな〜と思っていたら、Twitterで連載されているお話で、こちらのサイトでの掲載ものすごく嬉しいです!これからも頑張ってください🤍 (2022年1月16日 20時) (レス) id: 52316583bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:詠夢 | 作成日時:2022年1月7日 22時