Flower72 ページ22
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SideA
走った。
柳に手を引かれ、止まることなく、ひたすら走った。
でも、もう限界だった。
A「や、柳もう無理、息が苦しい…！」
柳「あぁ、すまない。」
私の言葉で走っていた足を止める柳。
肩で息をする私とは正反対に
平然とした顔の柳にムッとした。
テニス部レギュラーの男子と帰宅部女子の体力を一緒だと思わないでほしい。
柳に連れられて走ってきたこの道は、精市のいる金井総合病院までの道のりだった。
この道も通い慣れる程歩いた。
柳のこの、突拍子もない行動は
きっと柳なりの私への励まし。
精市に会って思ってることを言えってことだよね…？
柳が言いたいことは伝わってる。
でも私にはそれが出来ない。
私の考えなしの発言で誰かを失うなんてこと、もうしたくない。
_______また一人になるのが怖いんだ。
柳「怖いか？」
ハッとして顔を上げると、真っ直ぐ私を見つめる柳がいた。
柳「A、精市はお前の話を聞いてくれないほど心の狭い男じゃない。それはお前が一番分かっているはずだ。それに…」
また、いつものように目を閉じて、穏やかな笑みを浮かべた。
柳｢精市がお前を一人にさせるわけないだろう。」
何故だろう。
他の誰でもなく、柳に言われると説得力がある。
何故か、なんて答えはもう分かりきっている。
柳は私に、一度だって嘘をついたことがないから。
柳の顔を見て頷くと今度は私が柳の前を走り出した。
心の中のモヤモヤは、もう消え失せた。
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作者名：ゆん | 作成日時：2018年8月12日 20時
