５９．さみしい時 ページ9
先ほどまでの穏やかな店主はもういない。
「……ブルームハーバー」
「そうだ…！」
「チビだったからって覚えてないとは言わせない！」
「おまえのせいだ！」
「おまえのせいで…おれの店は…」
「おまえなんてとっとと消えちま…」
不意に店主が攻撃されて倒れた。
現れたのは店主を蹴り飛ばしたサンジと
息を切らして駆けつけてくれたウソップだった。
サンジside
油断した……追手を見逃していた。
船に戻ってきたサンジ ウソップ A
「すまねェ Aさん」
「なんでサンジ君が謝るの？」
「Aさんをひとりにさせなかったら、こんな危ない目に合わせずに済んだ」
「それは ひとりでいいってわたしが言ったからだよ」
出会った当初に比べて、会話を交わして、一緒に食事して、少しずつ打ち解けてきた。
でもAさんはまだ おれの知らないなにかを抱えている。
ひとりで苦しんでいる。
「きみをさらおうとする野郎が現れても必ず守ってみせる」
「……守られなくても平気」
Aさんは強がりを口にした。
「違いねェ Aさんは強いから」
4年間 たったひとりで生きてきたんだ。
守ってあげるほど弱い子ではないことぐらいサンジも分かりきっていた。
でも……それでも……
「さみしい時は頼っていいんだぜ」
「……きみを守りたいんだよ…」
もっと頼ってほしい、守りたい
という素直な気持ちを伝えた。
Aside
“さみしい時は頼っていいんだぜ”
“きみを守りたいんだよ”
潤んだ目元を見られないように必死で隠した。
「ごめん 泣かせるつもりじゃ」
首を振り、謝らなくていいと否定した。
「うれしい」
失くしていた心をサンジ君と出逢った日から取り戻しつつある。
心がじんわりと温かくて、それと同じくらいに切なさを感じていた。
彼のことが好きなんだと改めて実感させられた。
頼ったら必ず助けてくれる。
もっと言えば 頼らなくても助けてくれる。
常に周りに配慮して動くから、優しさに非の打ち所がない。
この優しさに甘えてしまえば、離れられなくなる。
離れるなら今しかない。
Aは決断を迫られていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 391人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：NAV | 作成日時：2023年11月1日 22時
