８３．やさしくしない優しさ ページ33
サンジside
今日になって一度も目が合わない。
そもそも会話していない。
避けられていることは明らかだ。
だからって気にしなくていい。
いつも通りに過ごせばそれでいい。
そう自分に言い聞かせた。
作業していると、ナミさんに合図され、ナミさんの元へ向かう。
「あと一度でもやさしくしたらAは一生サンジ君のこと忘れられないわよ」
「それってどういう」
「自分でよーく考えなさい」
ナミさんの言葉の意味を理解できないほど馬鹿ではない。
ただ信じ難いだけだ。
ありえない。
そんなわけないだろう。
でも、
もし仮にそうだとしたら…
表情、仕草、態度
どれをとっても美しい…じゃなくて、
振り返れば 思い当たる節はある。
だからって、どうすればいいのか、すぐに答えなんて出せやしない。
「というわけで、今日一日Aの護衛、サンジ君 任せたわよ」
「は、え、なにが『というわけで』？」
「Aには買い出しをお願いしたから、先にフラワービレッジに向かってるはずよ」
「無視しないでくれよ」
「ほか6名は明日の出航準備諸々で忙しいから」
「ナミさん？」
「昼食は気にしないでいいわ。食べる時間きっとないし、テキトーに済ませるから、あ、夕食もわたし達で作っておくから気にしないで。帰りはいつでもオーケーよ。じゃあよろしくね！」
「ちょっと待っ」
バタン、ガチャ
鍵かけたな、完全に
一方的に話されて、閉め出された。
まだどうすればいいかわかってないってのに
とにかくAさん一人に買い出しを任せるわけにはいかない。
ひとまず向かうか。
向かいながら考えればいい。
やさしくすれば、忘れられない。
やさしくしなければ、忘れられる。
彼女を思えば、
おれのことなんて忘れてもらうのが一番だろう。
やさしくしないとは言っても
具体的にどうやって？
冷たく接するとかか？
忘れてもらうためとはいえ、そんなことできねェ
つまりは今まで通りではダメってわけだ。
どの道、傷つける事になってしまう。
なら 一体どうすればいい。
結局答えを出せないまま、
愛おしい後ろ姿を見つけた。
ナミside
断るのなら はっきりと伝えて
なんの未練も残らないように
やさしくしない優しさ だってある。
中途半端なやさしさでは傷けることになる。
だって あのコは…
野暮だってわかってる。
ただ確かめたい。
サンジ君に、
Aの心を永遠に奪う覚悟があるのか を
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作者名：NAV | 作成日時：2023年11月1日 22時
