ミス・レディの逃避行 II【ONEPIECE】 (ページ32)

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８２．隠された目ページ32

出航前日の朝〈出航まで残り22時間〉

出逢う前のように
皆と話すのと同じように

そうやって意識すればするほど、

会話できず
目すら合わせられず

意識的にサンジ君を避けるようになってしまった。

以前から好きだという自覚はあった。

ではなぜ突然避けるようになってしまったのか。

原因は昨晩の出来事にあった。

夜更の寝たフリ –回想–

この島に留まる、と皆に伝えたこの日

迷いがないとは言えず、
あげく悩まないでいい事まで悩み、
疲弊しているにもかかわらず、眠りにつけないでいた。

Aは出航の前日までメリーで寝泊まりする事になっており、
となりではナミとロビンがすやすや眠っている。

時計を見ると、まだ日付は変わっておらず、
しばらく秒針を見つめて、時間の経過をひたすら待った。

ふと一度意識した喉の渇きを見過ごせなくなり、
壁を伝いながら音を立てぬように暗闇を進んだ。

女子部屋を出ると、光が目に入る。

闇に慣れた目はまぶしさに眩(くら)んだ。

ようやく部屋の明るさに慣れてきて、
明かりを灯したまま、壁にもたれかかり眠ってしまっているサンジの存在に気がついた。

テーブルには作業をしていた痕跡が残っていた。

初めて見る眠っている姿

起こさないようにおそるおそる近づいてみる。

冒険を通して出会った人々それぞれに物語がある。

苦しい思いをしているのはわたしだけじゃない。
みんな傷を抱えて生きている。

そのことを知れて、気持ちを整理できた。

あなたはわたしの傷を知っているけれど、
わたしはまだあなたの傷を知らない。

それだけの事で
まるであなたをなにも知らないみたい。

だれに対しても等しくやさしい

だからこそ本心がみえない

この気持ちは迷惑かもしれない

今度はあなたのことを教えてほしい

一歩また一歩近づく

前髪で隠された左目を見てみたい

あなたに触れたい

その欲求を満たすため、

髪に触れようと手を伸ばす。

「こういうのは起きてる時にやってほしいんだけどな？」

閉じていたはずの目はこちらを見捉えていて、

いつから起きてた！！？

わたしは一体何をしようとしてた？

はずかしさのあまり、その場を逃げ出して、女子部屋に飛び返った。

毛布にくるまりながら、
起きたことを思い出す。

冷静に考えると、
彼はあんな所で寝てしまうことなんてきっとない。

寝たフリなんて、ズルい。