６８．抱える闇 ページ18
メリー号から走り去るAの行く手を
手がこちらに伸びてきて、Aの腕や足を掴んだ。
「…ロビン」
Aを引き止めたのはロビンだった。
「あなたはなにを抱えているの？」
「それが聞きたいのはわたしのほう」
「ロビンこそ なにを抱えてるの？」
「答えるのは あなたからよ」
「先に質問をしたのは私なのだから」
答えるまではここを通さない、という意思を感じとり、
観念したAはぽつりぽつりと心に秘めた思いを漏らした。
「始めから間違ってた」
「家を逃げ出した事、自由を求めた事、人を騙した事、頼った事、心を許した事」
「…」
「これ以上 迷惑をかけたくない」
「だから お願い。ロビンからも伝えてほしい。船を降りて、家に帰る、それだけだって伝えてほしい」
「私の言葉で聞き入れてもらえるかしら」
「もらえるに決まってる！ロビンは仲間なんだから」
「本当は もっとロビンと話したかったのに、時間が足りなかったな」
ロビンside
彼女は 私がはじめから仲間だったかのように振る舞った。
“ロビンちゃんはコーヒーが好きだね”
“わたしも好きなんだ！”
“ロビンが 今 読んでる本 おもしろいよね”
“今度 おすすめの本 教えて”
“ナミさんがわたしに選んでくれた服なんだけど、サイズが合えば ロビンに似合いそうだな”
“ロビンはどんな服が好きなの？”
かけられた言葉はどれも私自身を知ろうとするものだった。
私はあなたを傷つけたのにどうして…
「どうして私に優しくできるの？」
「ロビンだから」
「わたしの優しさは“だれに対しても”じゃない」
「ロビンだからだよ」
行方不明のお嬢様 ミス・レディ
身体の火傷跡
政府に追われる身
あなたにも きっと 私と同じように闇がある。
彼女の気持ちは計り知れない。
踏み入っていいのかもわからない。
だけど 私は、
あなたが 抱える闇 を知りたい。
くすぐられたロビンの好奇心
止める事は誰にもできない。
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作者名：NAV | 作成日時：2023年11月1日 22時
