ミス・レディの逃避行 II【ONEPIECE】 (ページ15)

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６５．狭間を彷徨うページ15

目を覚ましたAが冷たい床から起き上がると同時に頭が鈍く痛む。

ハリーンに気絶させられたことを思い出し、まわりに目を配ると、髪の毛が床に散乱していた。
髪を手で触れると、肩下まで伸びていたはずの髪は、顎(あご)の位置で乱雑に切られていた。

牢に備えつけてある机の上には紙切れがある事に気づいた。

確認すると、その紙はウッドの死を証拠づける死亡届だった。

祖父ウッドの死
Aにとって生きる希望を失うも同然だった。

たったひとりだった家族ももういない。
本当に独(ひと)りになってしまった。

死亡届の隣に置かれていたハサミを使い、自分で髪を綺麗に切りそろえ、そのままハサミを持ち替えて、刃先を自分の胸へと向けた。

生きる価値も生への執着もなくなった。
ここにあるのは絶望だけ。
自由や夢も無意味だ。
わたしにとっておじいさまだけが頼りだった。
いつかまた会えると信じてた。

刃を天に向け、左胸にあてた。
上から体重をかければ母やおじいさまと同じ世界へいけるだろう。

思い出してしまうのは、
彼らとの冒険だった。

痛みや苦しみは分け合って、
楽しい時は一緒に笑って、
心を共有した。

彼らの事を思い出すと胸が締め付けられるようだった。

ここに居てもいい、仲間だ、と言ってくれる
家族のように大切に思う仲間がいる。

死を恐れてしまうほど
生きることを諦められない。

「なにが起こっても心のままに生きるんだよ」

おじいさまのくれた言葉を復唱したAの声が暗闇に溶けた。