Oversight (ページ10)

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「いやー串カツはやっぱり最高やな〜」

「本場でエセ関西弁はキツイぞ。」

「いやいやそんなこと言って、お兄さんも東京に染められてるんじゃないの？」

「俺はネイティブやねん、舐めんな。」

「ネイティブは笑う。」

染められてるのはどちらかというと私の方だ。
丈一郎も西畑くんも大橋くんもみんなバリバリ関西弁だし、
酔った時しか出ないけど同期の親友だって出身はこっち。

たまにその輪の中に入りたくて真似してみようとするけど
ことごとく丈一郎にバカにされて終わる。
別に話せるようになりたいわけじゃない、出来ないのが悔しいだけ。

「飲みすぎんなよ。流石に家まで運ぶのは無理やぞ。」

「泊まろうよ〜ビジネスホテルぐらいなら空いてるでしょ。」

「…お前なぁ、」

バカだと思われてるならそれでいい。
だって、バカしてる奴の方が人生楽しそうに見えるでしょ？

カッコイイ先輩を演じるのも、
大人っぽい女性になるのも、
私には向いてなくて

というか出来なくて。

せめて出来ることなんて
人生楽しそうに生きている人のフリだけ。
そうすれば大抵の人とは上手くやれた。

ちょっと我儘言う子の方がモテるんだよって
昔誰かが言ってた。

だって男は守りたくなるような子が好きなんだもんね？

…あぁ、思い出した。
このあいだ一緒に合コン行ったあの子だ。
やっぱモテる子は捕まえるのも早くて
私は惨敗だったなぁ。

少しずつ回るアルコールに身を任せて
愚痴を言う時みたいなテンションで可愛げもなく呟く。

「今更2人で泊まるとか、気にしないでしょ？」

その顔が不満そうに歪んだことには
気付かないフリをした。