Oversight (ページ7)

今日:20 hit、昨日:42 hit、合計:18,064 hit

・ページ7

・

「着替えてくる。」

「は？汚れたん？」

「違う。せっかく応援するならユニフォーム着るでしょ。」

取り出したTシャツに目を見開く丈一郎。
いや、自分が言ってたじゃん。来るなら着ろよって。
いつだったか忘れたけど。

最初から着てくればいいって言うのはさ、
確かにそうなんだけど。
新調したワンピース着たかったし？来るまではデート気分だったし。

「じゃあ行ってくるね。」

「人多いから気付けろよ。迷ったらすぐ連絡しろ。」

「はーい。」

まぁあの時は、一緒に野球を見る日が来るとは思わなかったけど。

『藤原丈一郎です。野球好きなんでよく見に行きます！』

関西出身だからか。
自己紹介の時に皆の笑いを取ったのは丈一郎だけだった。

第一印象は面白い人だなーっていうのと
多分関わらないだろうなーってこと。

今じゃありえないけど
入社すぐの私たちのイメージはお互い今と真逆だったと思う。

ムードメーカーの藤原とサバサバ系の藤。
たまたま名簿が前後だっただけ。それ以外に接点は無かった。

『これ、こっちの方がおもろない？』

『確かに。さすが藤原くん！』

『なぁ、藤はどう思う？』

ちゃんと話したのは1回目の同期会だった。
同じテーブルというだけで全く会話に参加していなかった私に声をかけて。

『…こっちの方が面白いと思う。』

お酒が入っていたせいで
いつもなら軽く流す所を突っ込んでしまった。
気付いた時にはもう手遅れで。

目を見開いた丈一郎から目を逸らした。

『え、マジか。マジやん。』

『…』

『こっちの方がおもろいやん！俺、これ知らんとかめっちゃ損してたわ。』

お笑いが好きで見ていたコント動画。
関西人にお笑いで喧嘩を売るなんて、まぁ、ありえないと思っていたのに

意外と丈一郎が乗ってきてくれたことに驚いたのを覚えている。