Oversight (ページ6)

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「え、これいい！」

「んじゃあこれ、」

「あ、待って。こっちもいい！」

「…時間来るからはよしてくれ。」

駅弁にはしゃぐ姿を横目に
ガキやなぁ、まぁ、そういうとこがええんやけど。

水色のワンピース。
動く度に揺れる髪。
見慣れへんからか余計に煩くなる鼓動と
合コンとかマッチングとか他の男とのデートもこういう格好してるんやとしたら。
ちょっと、ダルいっていうか。

「やっぱこれかなぁ、」

「もう決めたか？」

「これとこれで悩み中。」

「どっちも買うし行くで。」

「え、2つも買ってくれるの！」

「アホか。1個は俺のや。」

「ありがと。」

…ダルいどころの騒ぎちゃうわ。
今すぐ辞めさせたいくらいなんやけど。

それを何年も放置してた俺が今更言えることちゃうから
結局今まで通り流すだけで。

「向こうで551の肉まん買ったるから。」

「ちまきも欲しい！友達が美味しいって言ってた！」

「はいはい。」

ホンマに罪やで、
振り回されてるのはいつもこっちやから。

その頭に置こうとした手を止めた。
せっかくセットした髪崩れたら文句言いそうやな。
そんな言い訳をして。

簡単に触れれば触れるほど
意識もされへんくなるのが怖くて。

「…行くで。」

「何分のやつ？」

「23分。」

「もうちょっと時間あるね。よし、丈一郎こっち向いて。」

「なに、」

「はいチーズ！」

「は？」

「デートの証拠。」

もう、なんなんや。いつも。
鬱陶しいのに憎めへん。

それは
いつの日か俺が渡したキャップがカバンから見えていたからか。

いや、もう手遅れなだけやな。