Oversight (ページ30)

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「…誕生日おめでとう…ハピバ…はっぴばーすでーとぅーゆー…」

「何してんねん。」

「うぇ、いつの間に。」

「俺は定時に帰ろうとしてるだけやけど？」

週末にあげた(？)半日は
特に怪しまれることなく終わった。

途中から気が気じゃなかった私は少しよそよそしくしてしまった気はするけど。

「あ、え、っと、この後のご予定は？」

「帰るって言ったやろ。別にない。」

「…あー、」

何を躊躇っているのか、自分でも分からないし
言葉が出ない。

「何やねん。」

「ご飯、行きませんか。」

「ええけど。」

何とか引き止める言葉を探して向かったいつもの居酒屋。
ムードもクソもないな。いや、いるのか？

1杯目、2杯目…
言わなきゃという圧が余計に言葉を吸い取っていく。
酒の力に身を任せようと諦めたその時、
控えめに話し出した丈一郎の声が耳に入ってきた。

「週末、楽しかった。ありがとう。」

「へ？」

「何の善意か分からんけど、感謝しとかな、って。」

「…誕生日、！」

「は？」

「誕生日、だから、プレゼントって思ったんだけど。」

何が欲しいか分からないし、
悩みに悩んで買ったのは帽子だった。
彼のことだから大量にあるんだろうけど。
要らないんだろうけど。

「お前、覚えてたん。」

「去年はちゃんと祝えなかったから、覚えた。」

「…さんきゅ。」

自分の体温が勝手に上がったのが分かった。

その笑顔に見とれてしまっている自分が、
それを見つめる彼が、

「おい、なんて顔してんねん。

…勘違いするやろ、」

同じ気持ちだと気付いてしまった。