Oversight (ページ29)

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当の本人は全く気付いてないようだけど
無理矢理約束を取り付けたのは彼の誕生日を祝うためだった。

当日は平日だし。一緒に過ごせるか分からないし。

どこかでこっそりプレゼントを買う予定だったのが
想定外のお願いのせいで呆気なく崩れた。

バレない方が好都合だから
プレゼントは後日買うことにする。

「これ、意外と合うから食べてみ。」

「アイス？本当に合う？」

「これはマジやから！」

「…うん。美味しい。」

「やろ！」

こっちが貰っているような気がするのは
何故なのか。

その理由を考えてみたら、いつもより子供っぽい彼と目が合った。

「次、バッセンな。」

「私も打つの？」

「当たり前やろ。」

いたずらっ子のような笑顔。
それが凄く久しぶりに見たような気がして、
慌てて目を逸らす。

…こんな風に笑う人だったっけ。

飲み過ぎた日のお迎えも突然の呼び出しも
いつも呆れたように笑って
最後は許してくれる。

いつも甘えるのは私の方で、
その面倒を見るのは丈一郎で。

無理させてるのかもしれない。

一瞬よぎった"それ"は、
私の罪悪感を大きくした。

「あ、あそこ2人分空いてるわ。」

私との付き合いに疲れて、
他の人のことを好きになってしまったとしたら。

「おーい、聞いてるか？」

「先、行ってて。靴紐直してから行くね。」

…それは嫌だな。