Oversight (ページ15)

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「は…？」

なに、今の。
1人きりになった部屋には私の声だけが響く。
いつものように「冗談や。」なんて言って笑う丈一郎はいない。

好き？
丈一郎が、私を？

ぐるぐると巡るこれまでの時間の中に
そんな素振りがあったかと、探してみたけれど

「いつから、？」

思い当たる節は無かった。

"警戒心持てよ"

言い捨てるように出て行った彼は
いつもの丈一郎と同じ人だとは思えなかった。

この関係を変えたくなくて、
あえて言葉にしてこなかった。
これ以上先に進もうとも思わなかった。

むしろこのままで、曖昧なままでいるのがお互いに楽だと思い込んでいた。

違う意味で、変わってしまった。

「これ、帰ってくるの？」

帰ってきた丈一郎と顔を合わせて
今まで通り振る舞える自信がなくて、
とりあえず広いベッドに潜った。

もう一度寝て起きたら、夢だったりしないだろうか。
今日も飲みすぎたし。そう、きっとそのせいだ。

言い聞かせるように目を閉じた。

次の日、目を覚ました時にはソファで眠る彼の姿があった。

夢を見た気がする。
でもそれはどんな夢だったか思い出せなくて。

ただ、"あの言葉"は夢ではないと分かってしまった。