Oversight (ページ11)

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初めて好きになった人は塾の先生だった。

少しだけ年上の大学生は
同級生に比べて余裕があって大人で
カッコイイ、なんて思ってた。

でもその人には彼女がいて
多分同い年の綺麗な人で
並んでいる2人を見て、お似合いだと思った。

その時分かったんだ。
先生にとって私は所詮子供で
彼女どころか恋愛対象にすら入れてもらえないんだということに。

それは私が同級生男子に抱いていた感情と同じだった。

「…名前、なんだっけ。」

夢に出てきたあの先生の名前も今となっては思い出せない。
あんなに好きだったはずなのに、

いや、あの頃の恋愛感情なんて自分でかけた催眠にすぎなかったのではないか。今ならそんな風に思う。

「ん、」

目覚めた時にはベッドの上にいた。
恐らく丈一郎が取ってくれたホテルの部屋。

広い。

奥の部屋からシャワーの音がして
そこで2人部屋だと気付く。

「…うわ。」

よくよく考えるとメイク落としも着替えも持って来ていない。
流石に買いに出るか。と立ち上がった時に
丁度シャワールームのドアが開いた。

「…起きたんか。」

「あ、うん。色々お世話になりました。」

「どこ行く気やねん。」

「とりあえず、コンビニに。」

「ちょっと待っとけ。一緒に出るから。」

「あ、はい。」

いや、気にしないと言ったのはこっちですけどね
流石に上裸の知り合いを前に平気という訳ではなくてね！？
むしろ知り合いだから気まずいというかね、

目の前の彼から目を逸らしたまま
静かにドアの方へ進む。

「おい、待て。」

「まだ出てないですー。」

「絶対、1人で出るなよ。」

なぜ彼が頑なにそう言ったのか。
その理由を知るのはすぐのことである。