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いつの間にか呼び方も「亮平」「A」に変わり、暑さよりも寒さの方が得意な私はテンションが上がり始める秋と冬の境目。
何だか亮平が忙しないことに気がついた。
「亮平、なんか忙しそうだよね。」
「え?」
「バイト?」
周りの大学生はほとんどがバイトをしているらしいから、亮平もその1人かな、なんて考えていたけど、どうやら違うらしい。
キョトンとした顔で「知らないの?」と聞いてくるから、私も同じようにキョトンとなる。
え、亮平の忙しい理由ってそんな有名な事なの?
やがて亮平は嬉しそうにし始めるからわけが分からない。
私には知られたくない事なのかな。
私には知られたくなくて、有名になるようなバイト。
そうなると私の頭には「夜のお仕事」という言葉が浮かぶ。
「何、怪しい仕事でもしてるの?」
恐る恐る聞いてみれば、「なんでそうなるの。」とおかしそうに笑う。
「いつか教えるよ。」
なんてはぐらかし始める彼が、何だか急に遠い人に思えた。
拗ねたふりをしてみたけど、どうやら教えてくれる気はないらしく、大好きな勉強を再開する。
手元にある参考書は文系の私にはわからない理系の教科のもの。
覗いてみるけどなんにもわからなくて、帰ろうかな、と身支度を始める。
でも帰ればあの嫌な両親が、父がいる。
亮平と話せなくなると途端につまらなくなって、机に突っ伏した。
いつの間にか寝ていたみたいで、勉強の終わった亮平に起こされる。
「A。A、起きて。」
「ん…ん…?あれ、私寝てた…?」
「うん。ごめん、寒かったでしょ。」
「なんで亮平が謝るの?」
謝りながらもどこか嬉しそうな亮平。
そんな彼を見て、胸がキュッとなった。
一緒に歩く廊下がいつまでも続いてくれればいいのに。
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作者名:桜海 | 作成日時:2020年5月28日 23時