溺れて、みずうみに (ページ34)

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兄が怪我をしてからは、送迎を頼むことも出来なくて、徒歩で帰っていた私は電柱の傍に誰かがたっているのが見えた。

その人は、ここ最近毎日来てくれている、背格好が亮平に似た人。

今日だって本を借りていったばかりだ。

なんであんなところにいるんだろうと不審に思っていると、その人が影からこちらを見ているのが見えてしまった。

気づいてしまった。

彼がストーカーだったんだ。

逃げるようにその場を去れば、同じスピードで追いかけてくる。

何とか撒こうと遠回りをして帰ろうとしたけど、なかなか離れない。

走って自分の部屋に走り込んで、その場にしゃがみこむ。

なんでこんな目に会わなきゃいけないんだろう。

私は一体前世でどれだけの悪いことをしたのか、誰か教えて欲しい。

職場にいけばあの人が見張っている。

それを知ってしまった私は、何とか体の震えを抑えるためにコップいっぱいにいれた水を一気に流し込む。

少しでも気を緩めたら、亮平に電話をかけて頼ってしまう。

迷惑かけないって決めたでしょ。

こんなんじゃダメだ、切り替えないと。

そう思って亮平の電話番号を削除しようとしてみるけど、どうしても削除のボタンが押せなかった。