溺れて、みずうみに (ページ16)

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河原井さんにメールで「約束してきました。」と一応報告をすれば、彼女は自分の事のように喜んでくれた。

すぐに電話がかかってきたことには驚いたけど。

「もしもし。」

「おめでとう！」

「いや、付き合ったってわけではなく、会うだけですから。」

「おめでとう！！」

彼女も酔っ払ってることは明白だった。

酔っ払いに何を言っても無駄だと思い、素直にお礼を述べる。

「お酒は？」

「河原井さんに言われた通り、片手に持ってますよ。」

「んふふ、河原井さん。」

この人悩み無さそうだな。

まぁ彼女は今が最高に幸せなんだろうから、浮かれるのも仕方ない。

1度旦那さんに会ったことがあるけど、本当にいい人だったから、これからもその幸せは続くんだろう。

少し彼女が羨ましかった。

「Aちゃん。」

「はい、なんですか？」

「幸せになってね。」

それはこちらのセリフでしょう。

というか別に付き合うとかそういう話ではないんだから、その言葉はおかしいと思う。

「Aちゃんには、幸せになって欲しいなぁ。」

そう言って彼女のスマホが落ちる音がして、ちょっと心配になる。

でも直ぐに旦那さんの声がしたから、恐らく寝ちゃったんだろうな。

「もしもし。ごめんね、和子寝ちゃった。」

「いいえ、いつもの事なので、気にしないでください。」

「いつもありがとうね、Aちゃん。」

それもこちらのセリフ。

夫婦揃って、優しいにも程があるよ。