溺れて、みずうみに (ページ15)

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仕事終わりにコンビニで何本かチューハイを買う。

お酒は強くも弱くもないけど、1本で酔うほどではないし、何よりもし彼から今日電話がくるなら、お酒を入れた方がいい。

そうアドバイスしてくれたのは河原井さんだった。

『Aちゃんは頭が良すぎるから、ダメ！お酒入れなきゃ話せないことばっかりなんだから！』

まさか頭が良すぎる事をダメだと指摘されることがあるとは思わなかったけど、確かに彼女の言う通り。

お酒を入れれば、少しくらい素直になってくれると信じてみた。

自分でつくった料理をつまみながら、お酒片手に阿部ちゃん先生を見る。

画面の向こうで出すクイズは、大学生の時に出してくれたものと同じものもあった。

懐かしい。

少しにやけていると、昨日と同じように携帯が鳴る。

昨日よりも躊躇うことなく出られた電話に、ほっとした。

「もしもし、俺だけど。」

「わかってるよ。」

そう答えたはずなのに、彼からは返事がこない。

何回か呼びかければ反応してくれたけど。

「あ、ごめん、ちょっと考え事。」

「電話中に考え事しないでよ。」

わざわざ言わなくてもいいのに、正直な彼のことだから、思わず言っちゃったのかな。

そう思うとなんだか可愛く思えた。

「あのさ。昨日も言ったけど、その…近いうちに、会えないかな。」

「いつ頃？」

「えっ、うーん…そっちにあわせる。」

少し考える。

本当に会ってもいいのかな。

もしそれが彼にとっての一大事に繋がれば、私は一生私を恨むことになる。

でも、河原井さんも言っていたけど、彼だって勇気を持って電話をしてきてくれたのかもしれないし、もしかしたらただ友達として会いたいだけかもしれない。

それに、やっぱり久々に私が会いたかった。

「ダメ？」

「あ、ごめん、カレンダー確認してた。」

少しの嘘をついてその悩みを誤魔化し、彼と約束を取り付ける。

土曜日の夜。

少しだけ胸騒ぎがした。