溺れて、みずうみに (ページ1)

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仕事の帰り際。

仲のいい5歳年上の先輩である仲野さんが、ウキウキした様子で私に結婚の報告をしてきた。

「おめでとうございます。」

「ありがとう～！ね、ドイツ語！ドイツ語で！」

「Alles Gute！」

「きゃー！かっこいい！惚れる！」

今日異様にテンション高いな、とは思っていたけど、これでか。

確かに、普通の女の人からしたら、結婚って人生の節目っていうか、大きな目標だよね。

「Aちゃんは？結婚したいとか思う？」

「…いえ、まったく。」

「そっかぁ、最近多いよねー、そういう人。」

適当に話しながら頭に浮かべるのは、目の前で笑っていた優しい彼。

結婚、という言葉に生憎いい思い出はないけど、その思い出と同時に浮かぶ彼との日々は色鮮やかだった。

きっと私の人生で、1番幸せだったし、これからもそれは揺るがない気がした。

家に帰って、インターネットテレビでYouTubeを開いて、BGM代わりに適当な動画を流す。

料理をしながらそれを聞き流すのが私の日課。

そんな日課の中に聞こえた聞き覚えのある声に、画面をちらりと見る。

「どーもー。」

「「Snow Manでーす！」」

そこに映る彼は、相変わらず細くて弱そう。

そんな彼の笑顔を見て、胸が痛む。

君のいない日常は、悲しいことにすこし色褪せています。