溺れて、みずうみに (ページ27)

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職場に行くと、河原井さんが真っ先に私に飛びついてくる。

「Aちゃーん！！！」

朝から元気だなこの人、と思っていたけど、少しいつもよりメイクが雑な気がした。

これは何かあったな。

柄じゃないのはわかっているけど、彼女にはいつも助けられてるし、なにか力になりたくて話を聞こうととりあえず引き剥がす。

「何かありましたか？」

「ちーちゃんがね…」

ちーちゃんとは、河原井さんの旦那さんのことで、それを聞いて何となく察する。

「ちーちゃんがまた私のプリン食べたの！」

「…はぁぁぁぁ…心配した私が馬鹿だったのかもしれない…」

「え！？ねぇAちゃん～！」

旦那さんとの喧嘩の理由はだいたいデザートの取り合い。

もう結婚したんだからそこは共有財産でいいでしょ、というかそんなことで喧嘩するなんて平和すぎでしょ。

それをこの前彼女に言ったら逆ギレされたのでもう言わない。

まだグズグズしている河原井さんに、とりあえず仕事に集中して欲しかった。

なので、私は前から誰を誘おうか迷っていたものに彼女を誘って、気分を紛らわせよう作戦に移る。

「河原井さん。」

「ふぇ？」

「騒がしいの好きですか？」

「すき…」

「お金余裕ありますか？」

「ある…」

「8月末空いてますか？」

「空いてる…」

「イケメン好きですか？」

「好き！」

彼女に私のスマホを渡す。

そこには、「Summer Paradise 2019 当選おめでとうございます。」の文字。

「これは…？」

「ジャニーズJrのライブ、一緒に行きますか？」

「行く！！！」

すっかり元通りの河原井さん。

思惑通りに進んでよかった。

阿部亮平くん。

仕方ないから、私が今1番仲のいい人を連れて会いに行ってあげますね。