フォルダ２０９ ページ9
「探したよ。折角私は時間作ったのに」
こんなとこで何してんの、とAが俺の目の前で止まる。窓枠に腰掛けてた俺と視線を合わせるように、ホコリ被った机に座った。
「別に、色々あったんだよ」
「……文化祭は回らないの？」
「……」
回りたかったに決まってんだろ。しかしもう後半に差し掛かって、早いとこは店終い。今更何が出来るって。
「……どっかで遊んで来た？」
「私？ ううん。キヨ居なかったし」
「……そーかよ」
確かに元々乗り気じゃない様子だったし、Aが一人で回るとは思えない。それこそ、俺とかフジが引っ張らないと来てくれないだろう。
「……フジ君が受け付け代わってくれたの。だからキヨと遊べるかなって思ったんだけど」
「……悪かったな」
「私はこうやって二人だけで話すの楽しいよ」
キヨは文化祭楽しくないの？ と俺の目を見据えたAには、大方何があったのかバレてるんだろう。騒ぎになったのか。もうそんなのどうでもいいけど。
「……文化祭、俺楽しみにしてた」
「知ってるよ」
「お前と行きたい場所あった。折角付き合ったのに、何もしてない」
「……」
「何で俺の隣あんな奴だったんだろってなって……」
「カッとなった？」
「……」
無言でも間の取り方から察したのだろう。首を傾げたAはそっか、と小さく頷いた。
「殴ってないならいいんじゃない？」
「……呆れてんだろ」
「私が？ 何で？」
折角の文化祭。騒ぎ、と言うほどじゃなくてもトラブルになったのは事実。ふてくされて空き教室に引きこもった俺に呆れなきゃ、何だって言うんだ。
「私も安請け合いして悪かったし、キヨにしつこく声かけたその子にムカつくのも事実でしょ」
「……」
その言い方に違和感。他人に興味がないAにしては随分棘を感じる。
「……まさか……？」
「ちょっと位文句言ってもバチ当たらないでしょ」
そう鼻で笑うAはあくどい顔をしていた気がする。
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作者名：葵
| 作者ホームページ：https://twpf.jp/uranai_aoi
作成日時：2021年1月25日 21時
