【中村悠一】 中村の嫁はわがままがーる

罪と幸せ ページ36

日向が風邪をひきました。


なんとか午前中に病院に行くことができ、安心。
それでもとっても苦しそうな日向が不安で仕方がありません。

「日向死なないでね・・・」
「ただの風邪だろ」

悠一は朝から日向が熱を出したというのに平気な顔をしている。
自分の娘が苦しんでいるというのに・・・・。なんて奴だ！！

「日向、熱はパパに移しなさい。」
「おい、ケータイの裏に喉大事にしろって書いたの誰だよ」

赤ちゃんの熱は何があるかわからないから不安だ。
もう、家族は失いたくないから。あの日のようになりたくない。

私は両親ともいない。
お父さんは多額の借金を家族に負担させないために離婚届を置いて出て行った。
それからお母さんが１人で私と双子を育ててくれた。
１６歳の時に目の前でお母さんが倒れた。駆け寄ると席をしながら血を吐くお母さん。
私はその苦しそうな姿に何もすることが出来なかった。
すぐに救急車を呼べばよかったのに体が動かなかった。
死んでいくお母さんを見ていただけだった。

思い出すとクラクラしてきた。

「A？」
「ゆ・・・いち」

だめだ、立てない。

「おい、A！！」

倒れそうになったところを悠一に支えられた。

「ごめん。ちょっと横になるね」
「あ、あぁ。日向は見ておくから。」

お母さんは恨んでいるのかな。
立ち尽くしていた私を。

ふわっと髪をなでられるのを感じた。
上を見ると日向を抱っこしながら私の頭をなでる悠一。

「なでられんの好きだろ？」
「・・・うん。

・・・やっぱお腹ぽんぽんして」
「わがままだな」

悠一は日向を自分と私の間に寝かせて一緒に横たわる。
そして、お腹をリズムよくぽんぽんとしてくれた。

落ち着く。

ごめんなさい。お母さん。
私だけ幸せになって。でも、この幸せを捨てるなんてできないんです。


《罪と幸せのつり合い》＿＿＿＿＿＿＿Twitterより

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