ポータルの扉を叩けばー交差する時間ー

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あまり寝ていない私の頭には

二人のヤンヤン言っている声が響く。



「あっちでちょっと仮眠してくる…。」




奥のガレージには、団欒用に火のついているドラム

缶を囲むように、椅子が置いてある場所がある。




私はそこで、少し仮眠しようと思い足を向けた。




慎くんが、壱馬さんの部屋で寝ればいいじゃん、と

私に呼びかけてたけど、聞こえないフリをして私は

その場を後にする。





それができたら、今頃、寝不足になってません

よ…。






そう思いながら、みんなの部屋のさらに奥にあるそ

の場所へと角を曲がった時、壱馬くんの部屋の前で

サラさんと壱馬くんが…、




キスをしていた。








「えっ…、」




思わず声が漏れてしまう。




すると私に気づいた壱馬くんは、サラさんを離して、




壱「A…！違うんだ、これは！」





なにそれ…。



こんな偶然ある？




そんな言い訳じみた嘘なんて言う人、本当にいたん

だ…。




責める言葉を言いたいのに、声が出ない。





壱「A！これはっ…、」



その時、サラさんが私をチラッと見て口角を少し上

げたように見えた。





もう無理だ。





その瞬間、私は何も言わずに来た道を走って戻る。





後ろで壱馬くんが、私の名前を呼ぶ声が聞こえるけ

ど、そんなの応じるつもりはない。





走って走って、みんなのいる場所まで戻ってきて立

ち止まると、私を見てみんなが固まる。






慎「どしたの…。」


北「A…なんで…泣いてるの？」





「みんな…、ごめんっ…。」





私はそれだけ言って、出入り口を飛び出した。






ここでも私の名前を呼ぶみんなの声が背中から聞こ

えるけれど、振り向きもせずに街の中へ私は走る。





昼間だからか行き交う人も多く、走り抜ける私の腕

や肩が、通りすがる人にドンドンと当たるけれど気

にしない。





こんなんなら、ここに来なければ良かった。




あっちの世界でなら、こんな思いはしなかったのか

な…。






結局、壱馬くんは私じゃなくてサラさんを選んだん
だ。




そうだよね…。





こんなチンチクリンな奴じゃなくて、頭もスタイル

も顔も良くて、お酒も付き合えて、恩人の一人

で…。





壱馬くんがずっと、私のことを好きでいるなんて浮

かれてた自分が、馬鹿みたい…。






また涙で視界がぼやける。





二日連続で泣くなんて、瞼腫れちゃうなぁ…。

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