ポータルの扉を叩けば

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壱「そんな時にAが来て、

俺の夢と同じことを話すのを聞いて、

これは偶然なんかじゃないって思った。」




「それってもしかして…、」





壱「あぁ。もしかしたら、もう一人の俺とどこかシ

ンクロしてるのかもな。」




そんなことってある？





でも異世界があるくらいだし、そんなの氷山の一角

にしかすぎないかもしれない。





「シンクロ…。」






壱「だからもし、お前が帰ることになってもそっち

の世界にも俺がいる。だから大丈夫だ。」






そう言って、優しく笑う。






「でもっ…こっちの壱馬くんと私は会うことはな

い、絶対会えない関係なんだよ？！」




そう、壱馬くんは芸能人で私は一般人。





出会える確率なんてきっと、ゼロに等しい。




しかも、会えたとしても私のことを分かるはずがない。





壱「大丈夫だ。俺を信じろ。」




その目はまっすぐと自身に溢れていて、信じる力を

与えてくれる。




「でも…、」





コンコン


ガチャ



翔平「壱馬さん、力矢さんが呼んでます。」



壱「わかった、すぐ行く。」



翔平「代わりに俺がいようか？」




なんて気を使ってくれる翔平くんだけど、




「ううん、大丈夫！もう寝よかなって思ってたし。

ありがとう。」




翔平くんは、寂しくなったらいつでも呼べよ！と言

いながらドアを閉めた。





壱「夢のこと、聞いてくれてありがとな。でもそこ

は俺を信じてほしい。…じゃ、ちょっと行ってくる

からちゃんと寝とけよ。」





そう言って食器を持って、部屋を出て行く。







私は誰もいなくなった自分の部屋の天井を、ベット

に寝ながら見上げた。





信じろ。


そう言われても、形のないものを信じなくてはいけ

ないほど、難しいものはない。







だけど、もし本当に二つの世界で壱馬くんがシンク

ロしているのかもしれないなら、自分の世界に戻る

ことが少しだけ、ほんの少しだけ嫌じゃなくなって

くる。





本当にまた会える？


私に気づいてくれる？





会えなくなるなんて、今の私には考えられないよ。







そしてそんなことを考えていたら、お腹も満たされ

た私は瞼が重くなり、夢の中へ落ちていった。

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