一期一会 (ページ48)

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意識が隣に行ってしまいがちだったが、なんとか

仕事を終わらせることができた。

壱馬さんはというと、たまに携帯をいじったり

コーヒーを飲んだりと結局寝ずにずっと隣にいた。

「お待たせしちゃってすいません…。」

私たちは前にも来た川沿いを並んで歩く。

でももう桜はなく、若葉が芽吹いている。

壱「いや勝手に来て待ってただけなんで。」

いちいち、小さな優しさに胸が高鳴る。

「あのっ！何も言わずに移動しちゃってすいません
でした。

これを言うのも遅くなっちゃって…。」

壱「俺もなかなか顔出せなかったですし。」

「いやいや！逆にみなさんに迷惑かける形なっちゃって…。

でも壱馬さんは気づいてくれてありがとうございます。」

壱「やっぱり…陣さん言ったか…。」

壱馬さんは頭を抱え、ボソボソと何か言っている。

「え？陣さんがどうかしましたか？」

壱「いや、なんでもないです。」

やっと言えた。壱馬さんとの間につっかえてた物が

取れたような気がした。

「あ！あとですね…私ついに企画の方へ移動できる

ことになったんです！」

私はピースサインをしてみせる。

壱「ついに…ってことは、ずっとやりたかったんで

すか？企画。」

「そうなんです！縁の下の力持ちっていうか、ファ

ンの方に楽しんでもらう、アーティストの方に楽し

んでもらう、そんな企画に携われるのが夢だったんです。」

壱「じゃぁ、今度お祝いしなきゃですね。」

壱馬さんは優しい笑みで私を見た。

桜を見に歩いた時、別れた場所。

あっという間にそこに着いてしまった。

「今日はありがとうございました。

壱馬さんに話せて良かったです。」

壱「俺も話せて良かったです。」

名残惜しいけれど、じゃぁ…と方向転換をしようとした時、

壱「俺！Aさんのことがもっと知りたい。」

「えっ…？」

壱「陸さんや北人が知らないAさんを知っていき

たいです。」

えーっと…それはどうゆう意味でしょうか？

なんて言えるわけなく、

「どーぞ！！これからはいつでも、なんでも質問し

てください！！」

私は両手を広げて言った。

壱「フハッ。笑ちょっと解釈違うんすけど、

でもそんなとこが、好きです。」

好き…？

えぇえぇー？！！！