Last Love (ページ36)

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～北人～

北「樹ー、このワックス使ってみる？

めっちゃいいよ。」

収録のため準備中の樹に声をかける。

樹「え、いいんすか？」

北「うん、使ってみ。」

樹「じゃぁ…遠慮なく。」

(これ、いつも高いからダメって貸してくれないやつなのに…)

慎「あ、北人さん。この前、北人さんが買った靴あ

るじゃないですか？あれもう売り切れで～…」

北「そうなの？じゃ、俺のあげるよ。」

慎「え…まじでいいんすか？」

(あんなに気に入って買ってたのに？どうしたんだ北人さん)

北「いいよ、あげるよ。

なんてったって俺、いま気分めっちゃいいからさ！」

Aとデート？っぽいことができた日以来、俺は毎

日が輝いて見える。

こんなに空は綺麗だったっけ？とか、

道端に咲いている小さな花にも微笑みかけちゃうく

らい、世界が輝いて見える。

だからいつもは小生意気なこと言ってくる時もある

後輩たちにも、寛大な心で接することができるってわけ。

壱馬もAのことを好きかもしれない。

けど、この前のデートで決心がついた。

俺も好きだって。

それにAと過ごした時間と、また次も会える口実

ができたことで、こんなにもフワフワな気分になれ

るなんて。

スキップでもしちゃいそうだよ。

いつかちゃんと壱馬にも話さないとな。

慎「北人さん、どうしちゃったんだろう…。

なんか変…、怖い…。」

樹「良いことでもあったんじゃない？

だいたいどんなことかは目星はついてるけど。」

後輩2人からそんな目で見られてるとは知らずに、鼻

歌を歌いながら携帯をいじっていると、今まで消せ

ないままでいた人からのラインが来た。

北「♬～…えっ…。」

樹「どしたんすか？」

隣に座っている樹に気づかれる。

北「いや、なんでもない。」

見られるわけでもないのに、俺は携帯をすぐにポケ

ットにしまいこんだ。

樹「…そうっすか。」

今更どうして？

俺の東京行きが決まっても応援してくれるはずだった。

でも会えない時間の積み重ねで、心の距離も離れて

行って、君は新しい恋を選んだはず。

俺は君と別れて、今やっと新しい恋に踏み出せそう

だったのに。

どうして今更、会いたいなんて言ってくるんだよ。