恋文の書き方２

５５ ページ5

壱馬くんと北ちゃんが衝突した日から、

みんなは今までより更に

絆が深くなったように感じる。




その公演に向けて、毎日リハーサルを頑張っている

みたいだし、夜な夜なリビングでは一人一人が改善

するべき所を助言し合っていた。








そして私も男の子に対する偏見がなくなり、今まで

より心が軽くなったからか、表情が柔らかくなった

ねや、オーラが優しくなったなど言われるようにな

った。





でもそれがいいのか悪いのか、小さいことでもよく

頼まれたり、呼び止められるようになった気がする…。








慎「Aさーん、ねぇこれやって。」



「どれどれ？ちょっと動かないでね…。」




今日もリハーサルへ向かうみんな。




バタバタと準備をしているみんなの中から、前開き

の洋服のチャックが食ってしまった慎くんが寄って

くる。




だけどそれがなかなか取れなくて、手こずっていた

らどこからともなく現れた北ちゃんが、私たちの側

に寄ってきては、




北「近い！二人とも近いよ！！」




って言われても、前開きの洋服だからこの距離感は

仕方のないことだと思うけど…。




陸「Aさーん！その次でいいから一緒に洋服選ん

で〜！」



「はいは〜い。」



北「陸さん！それくらい自分でやってください

よ！！」




陸「今日はなんか迷っちゃって決められないんだも

ーん。」




翔平「陸さんの次は私が…、」


北「しょへは論外。」




翔平「なっ、なぬぅう？！」








ほらね、このありさま！




今まで頼みにくかったのは私がいけないけど、これ

じゃまるで、男子高校生だ。






あ、最近の高校生でもこんなに頼み事はしてこない

かな？









壱「なぁ、耳のホールどうなってる？なんか痛

い。」




来た…！


最近の壱馬くんの頼み事は、いつもドキドキするよ

うなことで本当に参る。






例えば部屋の掃除を一緒にしてくれとか、この前な

んか香水をつけすぎていないかチェックしてって言

われて、すごく近くまで接近してきたんだから！





ま、香水の件は私の心臓がもたないので慎くんにバ

トンタッチしたけど…。





それで今日もこうやって、距離が近い頼み事をされ

るんだ。

５６→←５４

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す