私はわたしー愛しい距離４ー

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そんな二人を席に案内して

メニューを差し出すと、

変わらない笑顔の二人は顔を

上げて私にお礼を言ったのを機に、私も微笑んでその

場をそっと離れた。



キッチンカウンターの方へ戻ると、忙しなく動くパパ

と叔父さんを尻目に、ナミちゃんがいくつも重なった

お皿を持って戻って来るなり、



ナミ「あー、もうカップルばっかで嫌んなっちゃ

う。」


「そんなこと言わないの。良いじゃん、みんな幸せそ

うで。」


ナミ「だってこっちは仕事だって言うのに、みんなラ

ブラブしちゃってさ〜。」



ため息混じりに口を尖らせるナミちゃんに、私は苦笑

いで思ったことを飲み込んだ。




叔父さんと結婚して独り身じゃないだけ、いいじゃな

いのと…。




それからは混んでいたせいもあってか、時間が経つの

はあっという間で、最後のお客様を見送った時に時計

を見て時間の経過に驚いた。





ナミ「はぁ〜、疲れた〜。」



閉店作業に目処がついたナミちゃんは、レジ締めをし

ていた私の側のテーブル席にうなだれる。



「お疲れ様。やっぱり今日はクリスマスだしで飛び込

みも多かったね。」



毎年恒例のことだけど、駆け込むように予約以外で飛

び込みも多くて、混むのはイヴよりもクリスマス。



ナミ「ほんとですよ！うちはカップルの駆け込み寺じ

ゃないっつーの。」


「まぁまぁ…。苦笑」




イヴで結ばれなくても、今日というクリスマスで想い

が通じ合ってからのうちのお店を選んでくれたり、も

しかしたらここで食事をしてから、勇気を出して告白

なんかしちゃったりする人もいるのかもしれない。



そういう人たちがいるかもしれないと思うだけで、な

んだか胸がホッコリして顔が綻ぶ。




ナミ「なーにニヤニヤしてるんですか？」



すると頬杖をついたナミちゃんに、怪訝な顔で見られ

た。



「えっ？！いやっ…別に…、」


ナミ「加納くんとやっぱり、ヨリ戻したとか？」


「違っ…！それは…ないよ…。」




私は数えていたお札を思わず握りしめて、勢いよくナ

ミちゃんを見れば、少しバツの悪そうに彼女はすぐに

謝った。



ナミ「すいません、ちょっと悪ふざけが過ぎまし

た…。」





加納くんと離れる決意をしたことは、あの日からすぐ

にナミちゃんには話した。



本当にそれでいいのか？と、何度も聞かれたが頑なに

首を横に振らない私に結局、彼女は根負けしたように

言った。



Aさんの選んだ道なら…、と。

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