私はわたしー愛しい距離４ー

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壱馬さんは自分の顔も見なきゃ

荷物をまとめる手を止めずに、



壱「具合悪くなったっぽい。だから帰らせるわ。」



確かにそう言った。




翔平「えぇ？！大丈夫なんすか？！」


慎「全然気づかなかった…。」



壱「大丈夫。熱っぽい感じやけど、今帰らせれば。」



カリン「壱馬っ…、」




そこへカリンさんが、何か言いたそうに顔を歪めた。



壱「…カリンさん、すいません。お先に失礼しま

す。」



軽く頭を下げた後、じゃっと翔平さんたちに告げて個

室を出て行こうとした瞬間、自分の体が勝手に動い

た。




嘉「僕が送って行きます！一応…、今日は僕がA

さんを誘ったので…、」


カリン「そっ、そうだよ！嘉将が行けばいい話しじゃ

ん！」



カリンさんの加勢には自分だけじゃなく、翔平さんた

ちも目を見開いている。



でも壱馬さんは、こちらに背中を向けたままだ。




嘉「だから壱馬さんは残って大丈、」

壱「大事な人の異変くらい気付けねー奴に、任せられ

るかよ。」




嘉「えっ…、」




低く唸るような彼の声に、その場がシーンと静まり返

る。




そして顔を少しだけ後ろに向けて、



壱「…Aさんのこと好きなら、大切なら…目ぇ離

すな。」




さっきと同じくらいのトーンでそう言い、個室を出て

行ってしまった。





なぜ、身体が動かないんだ…？


追わなくていいのか？自分。


それとも、言われたことが図星だから…？






その場で俯いていたら、翔平さんの的違いなフォロー

が。




翔平「まっ、まぁまぁ！心配なのは分かるけど壱馬さ

んに任せれば、絶対大丈夫大丈夫！」



慎「たぶん、そういうことじゃないと思う…。」


翔平「えっ？！違うの？！汗」





自分の不甲斐なさからくる罪悪感と、言い表しようの

ない感情に胸が張り裂けそうで、力無くその場に静か

に座ることしかできなかった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





ー…くん？加納くん…？ー



Aさんの声で、自分は絶賛電話中だったというこ

とにハッとする。



嘉「すっ、すいません！」


ー大丈夫ですか？体調悪いんじゃ…、ー


嘉「いえ！ちょっと考え事しちゃってて…、すいませ

ん…。」



ーいやいや！こちらこそ昨日は失礼なことをしてしま

った身なので、全然気にしないでくださいー



嘉「そんな…、Aさんこそそんな気にしないでく

ださい。突然体調崩すことなんて、誰にでもあります

から。」

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