１４１ ページ41
〜慎〜
慎「探しましたよもう。
挨拶してほしい人がいるから、壱馬さんのこと呼んで
こいって。」
壱「あぁ…、分かった。ありがとな。」
だけど景色の方を見つめたまま、一向に立ち上がるそ
ぶりを見せない。
こりゃなんかあったな、と長年の付き合いとして勘が
働いたので、自分も少し間隔をあけて隣に座る。
すると一呼吸置いてから、壱馬さんは口を開いた。
壱「…Aさんが、来てた…。」
慎「…どこにですか？」
ついに幻覚まで見えるようになってしまったのかと一
瞬、眉をひそめてしまう。
壱「今日、この場所に。」
慎「えっ、ここにですか？」
壱「…バリボっつたら、一人いるやろ。俺のライバル
だったのが。」
それを聞いて、答え合わせができた。
慎「加納くん…ですか。」
そうだった。
加納くんは壱馬さんたちが付き合う前からAさん
に想いを寄せる人で、一時はどうなることかと思った
くらい強敵だった。
今日この場にAさんがいるということは、きっと
彼等の関係は、前とは違うという可能性がある。
慎「…話せたんすか？Aさんと。」
壱「少し話せた…けど、思うようにいかないもんだ
な。」
はぁ〜と、ため息をつきながら壱馬さんはソファに埋
もれた。
慎「もしかして、加納くんとAさんて…？」
壱「分からん。ハッキリした事は言われなかったけ
ど…、でもAさんを守っていくのは自分だって言
われた…。」
口先を尖らせて不服そうな壱馬さんは、相変わらず前
を向いたままだ。
慎「それで…いいんすか？」
壱「いいもなにも…、」
壱馬さんは、前に言っていた。
壱ー俺の隣にいるのが苦しいって言われたら、納得で
きないなんて言えないやろ…。ただでさえ週刊誌の
件で嫌な思いさせてんのに…ー
それからどう考えが変わったかは、分からない。
だから、鎌をかけてみることにした。
慎「まぁ〜でも、Aさんがそれで幸せならいいん
じゃないすかね？」
壱「…そうやけど…。」
ボソッと聞こえた声に横目でチラッと盗み見すれば、
その横顔は俯いている。
慎「それとも…、なにか不満でもあるんすか？」
壱「…。」
煽るような言い方かもしれない。
それでもやっぱり、二人には幸せになってほしいか
ら。
黙って立ち上がる壱馬さんの背中に、そう心の中で二
度目の願いを投げかけた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 506人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「THERAMPAGE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みそじ(プロフ) - なつきさん» コメントありがとうございます！最近は更新が不定期かつ遅くて申し訳ないです（ ; ; ）それでもそう言ってくださって、とても嬉しいです（ ; ; ）これからも飽きずに覗きに来てやってください（ ; ; ） (2020年10月17日 17時) (
レス) id: 413d96903d (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - 切ない中でも温かさを感じるこの作品が大好きです。更新されるともう嬉しくてテンション上がってます。どんどん世界観にのまれてドキドキして号泣したりしてます。 (2020年10月17日 12時) (レス) id: 27a1861531 (このIDを非表示/違反報告)
みそじ(プロフ) - ましゅさん» いつもコメントありがとうございます！じれったくてすいません（ ; ; ）でも二人の徐々に変わっていく関係を飽きずに見届けて頂けたらなと思っています（ ; ; ） (2020年10月17日 12時) (レス) id: 413d96903d (このIDを非表示/違反報告)
ましゅ - 慎くん頑張ってくれていますね！そして壱馬さんが(;_;)このタイミングで気付いてくれるなんてやっぱり忘れられないですよ(;_;)早く元さやに戻ってほしいです！！けど主人公ちゃん体調大丈夫ですかね、、 (2020年10月13日 22時) (レス) id: ad7747e186 (このIDを非表示/違反報告)
みそじ(プロフ) - 律さん» お返事遅くなってしまいごめんなさい（ ; ; ）もどかしい感覚を味わって頂けて嬉しいです！更新は遅いは、まだ展開が続きますが、飽きずに覗きに来てやってください（ ; ; ） (2020年10月13日 11時) (レス) id: 413d96903d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みそじ
| 作成日時：2020年8月1日 11時
