nostalgic ２

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その後、

私の家の前で助手席の窓越しから

タカシさんにお礼を言う。




「…送って頂いて、本当に助かりました。」



タカシ「おう！」






道中ずっと再開発のことが頭から離れなくて結局、車

のドアを閉める頃にも答えは見つからなかった。





ありがとうございました、と軽く一礼し顔を上げた瞬

間、タカシさんは助手席の窓から顔を覗かせて、





タカシ「Aちゃん、俺たちも力になるから一緒に

頑張ろう！」





親指を立てて、ニカッと笑った。







けれど私は、力無く微笑み頷いた。









家の中に入った私は、上着も脱がずにリビングのダイ

ニングチェアーに腰掛けた。




数日しか帰らなかっただけで、普段は感じない自分の

家の匂いがよく分かる。






そんな誰もいない家の中は、止まることを知らないか

のように時計の秒針の音だけが響いていて、世界には

私しかいないのではないか、と錯覚がおこるほど静ま

りかえっている。






「はぁ〜…。」




広いダイニングテーブルにうなだれて、深いため息一

つ。





ユズからの「頑張れ」と、タカシさんの「頑張ろう」

…似たようなことを一日に二回も言われるなんて…。






次から次へと、失恋の余韻にも浸らせてくらないので

すか神様は…、なんて心の中で悪態をつく。






でも、少しホッとした自分がいる。




たぶんそれは、壱馬くんのことを考えずにすむことが

できたから。





トラブルは誰だって嫌だけど、今の私には何もなく平

凡な毎日の中で彼のことを考えずに過ごすなんて、自

信がない…いや、不可能だと思う。






だからこうやって、彼のことを考えずに何かに向き合

わなきゃいけないことになって、少し救われた気がし

た。





そうやって、少しずつ彼を忘れていこう。



じわじわとインクが滲むように、少しずつ上書きすれ

ばいいんだ。







「…よっし！」



勢いよく立ち上がった私は、壁の時計を確認する。





今、１５時か…。




二人が帰ってくるまで、まだ時間はある。





私は荷物を持って、自分の部屋へ小走りで向かった。

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