nostalgic ２

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ユズ「…そっか。

会えなかったのか…。」




ユズはまるで自分のことのように、悲しそうな顔。






「でも歌ってる姿は見れたし、それに…もう住む世界

が違うって実感して、決心はついたよ…。」





よくもまぁ、こんなベラベラと嘘を言えると思う。





でもたぶんそれは、精一杯自分自身を守るためだか

ら。





親友に真実を話してしまえば今、私がここにのうのう

と立っていることを絶対反対される。




壱馬くんの所に、戻れって…。




だけど、決めた。




あの時、彼が自分自身を犠牲して私を守ってくれたよ

うに今度は私が壱馬くんを守る番。







だから…だからその決心が揺らがないようにここは嘘

をつくしかなかった。



親友にでさえも…。







すると不意に、ユズに抱きしめられる。





「ユッ、ユズ？」




行き交う人からのチラチラと視線が少し恥ずかしかっ

たけど、友人と別れを惜しむ二人として見られている

んだろうなぁ、とすぐに思う。






ユズ「…私はどんな答えを出したにしろ、Aの親

友だからっ。」



「っ…。」




ユズ「だから…いつでも話したくなったら話して

ね？」








そしてギューッと抱きしめられて、パッと身体を離さ

れる。






ユズ「次は私が、久しぶりにそっちに帰ろっかな

っ！」





「…うん、楽しみにしてる。」






腕時計を見ると、そろそろ良い時間。





「じゃぁ…行くね。本当、色々ありがとう。」




ユズは笑顔で、首を横に振る。







ガラガラとスーツケースを引きずり、改札を通り過ぎ

た瞬間、





ユズ「Aっ！」





振り返ると改札を隔てた向こう側で、首を長くしたユ

ズが、







ユズ「頑張れっ！」







と、言った。






私はその言葉に微笑んで頷き、ホームへと歩き出し

た。








車内で、家路へと続く景色を眺めながら思う。






ユズは今回のことも、きっと何か勘づいている。



なんとなく、そんな気がした。






最後の「頑張れ」という言葉も、きっと違う意味。






これで良かった。


こうするしかなかった。







そう決めたのは自分なのに、不安定に左右に傾く私の

気持ち。






彼のため。



壱馬くんのために私は…、






前から後ろに流れる景色を追うことなく、どこに焦点

を置いていいのかさえも分からず、私はただただ時間

が過ぎるのを待った。

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