nostalgic

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その時、部屋のドアをノックしてすぐ

お母さんが部屋に入ってこようとしたので

慌ててベットに顔を埋めた。




母「A？大丈夫？」



「大丈夫…。お店は平気？」



私は、顔を上げずに言う。




母「もうあとは片付けだけでお父さん一人で大丈夫そ

うだから、心配しなくて大丈夫よ。そんなことより、

熱は？お腹痛いとかないの？」





「大丈夫、たぶん月ものだから…。ごめんね。」



なんて、嘘をつく。



だけど、ちょっと罪悪感。




母「そう…、ならゆっくりしてなさい。」



「ありがと…。」




これで心配かけずに逃げ切ったかな、と油断した瞬

間、





母「何事もやって後悔するより、やらないで後悔する

ことほど、悔しいものはないわよ？」




「っ…！」




お母さん、何が言いたいの…？



ベッドに寝っ転がる私の側に座るお母さんの気配を感

じる。





母「お母さんも若い頃、この街を出たかった時があっ

たの。」




お母さんが…？





母「こんな田舎じゃなくて都会で働きたい！って思っ

ても、お母さんのお父さん…Aにとってはおじい

ちゃんが大反対で。結局、地元の食品会社に就職して

お父さんと結婚してパン屋になって…それはそれで幸

せよ？ここにいなかったらお父さんとも出会えなかっ

たし、東京に行かなくて良かったって…。」




お母さんは少し息を吸ってから、






母「だけど…たまに思うの。もしあの時、それでもこ

こを飛び出していたら…って。もちろん今を後悔はし

てないわよ？でも、もしもあの時…って振り返るよう

なことがあるのなら、やらずに後悔するよりやって後

悔した方がずっといいと思うの。」





するとお母さんは、私の頭をそっと撫でて立ち上がっ

た。





母「ご飯、できたら呼ぶわね。」






静かに閉まったドアの音と同時に、私は仰向けになり

天井を見つめた。





お母さんはきっと、私が引っかかってることに気付い

てる、すぐにそう思った。






北ー壱馬がまだ、Aちゃんを覚えてても？ー




そして北人くんの言葉が脳内に再生される。






でも、覚えてなかったら？



覚えてても、今更なんだよって煙たがられたら？




そんな残酷なことになるなら、今のままの方が楽なの

かな…？




忘れたくても忘れられない、この辛さの方が…。






でも、なんであなたは私に忘れないおまじないをかけ

たの…？




そう思いながら、自分の額を触った。

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