nostalgic

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「えっ…？」





壱馬くん…？





北ーちょっと待っててね？ー




すると、そう言って北人くんの声の代わりに少しガヤ

ガヤとした音が聞こえたかと思うと、






北ー壱馬〜、この前のパン屋ブログに載せた？ー






かっ、壱馬くんがそこにいる？！




姿形は見えないのに、ドキンッと心臓は高鳴る。





そして、小さいけれど私の好きな人の声が。





壱ーえ？あぁ、載せた。約束したしな、Aとー






約束…？そんな約束したっけ…？

なんて一瞬頭によぎったのも束の間で、すぐに思い出

す。





壱馬くんたちがお礼をしにお店に来てくれた時、お代

はいいからその変わり、周りの人に宣伝しておいてく

ださいねって冗談っぽく私が言ったことを。






あの時は周りの友達や家族に…って意味だったけど、

それがとんでもない数の人に知ってもらえるきっかけ

になるとは…。









もう壱馬くんの中で私は、記憶の中にいないと思って

た。



私の名前も、存在も…。





それが、覚えていてくれてたなんて…。









そう思ったら目頭が熱くなり、視界が滲んでくる。





壱ーえ、でもそれがどうかしたん？ー



北ーいやっ、俺はまだ載せてなかったけど壱馬はどう

したかな〜って、ふと思ってねー






ありがと〜と、言う北人くんの声に、なんやねんと少

し笑ったような声を最後に壱馬くんの声は聞こえなく

なり、また静かになる。








北ーやっぱり壱馬だったねー




「良かった…、元気そうで…。」




北ー…泣いてるの？ー





泣いてるのがバレないようにしたのに声質で分かるの

か、あっけなくバレてしまう。




「泣いてないです…。」






北ーごめんね、これくらいしか力になれなくて…。何

度も言うけど、これが壱馬なりの優しさなんだと思う

んだ。だから、ー







「大丈夫です。壱馬くんの優しさっての、少し分かっ

たような気がします。北人くんも体調に気をつけて、

これからもお仕事頑張って下さいね。陰ながら応援し

てます。」




北ーえっ！ちょっ、ー







そして、北人くんが何か言ってるのを無視して通話終

了ボタンをタップした。








これ以上、壱馬くんと関わりのある人や物が身近にあ

ると、もっと欲張ってしまいそう。







それに壱馬くんなりの優しさというのを、全部理解し

たわけじゃないけれど、少しだけ分かった気がするか

ら…。

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