nostalgic

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ー放課後ー


「…って感じかな…。」





ユズと久しぶりの帰り道。


ゆっくりと歩きながら昨日の北人くんとのやりとりを

話した。






ユズ「ようは壱馬くんは不器用だから、最後のお別れ

の挨拶もしないで東京に帰っちゃったってこと？」





「そういうこと…なのかな？」




確かに北人くんはそんなニュアンスで言っていたけ

ど、正直よくわかんない…。







ユズ「でもそれってなんか、おかしくないっ？不器用

だけの理由にしたって最後になったあの日に、今日が

最後でもう来ないんだ〜ってくらい言えるでしょっ？

しかも二人の時間を忘れてほしくないなら尚更じゃな

いっ？」








まぁ…確かに短い期間ではあったけど、二人で過ごし

た時間を忘れないでほしいって言うなら、なんで何も

言わないでいなくなっちゃうんだろう…。







もし私が逆の立場で最後と分かっているなら、その事

実を伝えるのはもちろん、名残惜しくて帰ることがで

きなくなっちゃうよ…。






　
「それが壱馬くんなりの優しさなんだって、昨日北人

くんは言ってたけど…、でも本当のところはまた私が

泣き出したりしたらめんどくさくなったんじゃないか

な？」







私は歩きながら、自分の爪先を見て後ろ向きの考えが

止まらなくなる。






ユズ「あんなに良い感じだったのにぃ？！」






それとは対照的にユズは、ありえない！とでもいうよ

うな顔をした。







ユズ「本当にそう思う？すごく良い人だったんでし

ょ…？」





「うん、すごく良い人。律儀で、真っ直ぐで…。

だけど、壱馬くんは芸能人だよ？一般人には悪い面は

見せない。だからきっと二人の時間を忘れないでって

言ったのも、社交辞令っていうか…。」




ユズ「え〜…。社交辞令でそんなこと言うかな〜？」







あんなに期待に胸躍らせていた自分が、今更恥ずかし

くなる。






ユズ「それにしたって、なんで嘘ついたのかなぁ？自

分の名前が楓士雄だって…。」






「芸能人であることを気づかれたくなかった…と

か？」







立ち止まり頭にハテナを浮かべるユズと同じく、私も

足を止めた。






「ほらっ！友達とかにこの話しをして、それって芸能

人じゃない？って気づかれたくなかったんだよ。騒が

れても困るだろうし…。」









まぁ実際、失礼なことに私は彼が芸能人だということ

にすぐに気づかなかったけどね…。

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