nostalgic

３１ ページ31

理由ってなに？



わざわざ違う名前を名乗ってまで

ここに来ていた理由は…なに？






北「って言っても、俺からは言えないんだけど

ね…。」




「えっ…？」





北人くんは目を泳がせている。






「言えないって言われても…。」





北人くんから聞けないなら、どうすればいいの…？




その言葉を飲み込んで、彼の判断を煽る。





北「言えないっていうか…、壱馬の口から聞いた方が

いいかなって…。でも！ほんとに悪意があって騙すつ

もりじゃなかったんだ。それは信じてほしい。」






今度は大きな、まん丸の目がまっすぐと私を捕らえ

た。






北「ほら、前に言ったじゃん。なんで？って疑問に思

うようなことがあってもそれは、壱馬なりの優しさだ

って思ってほしいって…。」









そういえば…と、思い出す。




初めて北人くんと出会った日、確かにそう言われて今

後彼との間に何か起こるような胸騒ぎがしたんだっ

た…。









まさかそれが、これ…？






「いきなり会えなくなることが、壱馬くんなりの…優

しさ…？」







私は顎に片手を添えて、考えた。




「壱馬くんなりの優しさ」ってものを。





でも、全然分からない…。







すると北人くんは、眉毛を下げて笑いながら、






北「まっ、不器用だからさ大目に見てやってよ。」






「大目に見てって言われてもっ…、」









その先の言葉が、出てこない。






それを言われても、「壱馬くんなりの優しさ」っても

のがなんなのか当分、分からなさそうだから…。







北「んー…、じゃぁ携帯貸して？」



「なっ、なんでですか？」




北「いいから、いいから。」







疑いの目を向けながらも、渋々鞄から携帯を出して渡

すと、北人くんの携帯と私の携帯を振り出した。






まさかこれって…、







北「はいっ、これで完了っと。」





返された携帯の画面を見ると、吉野北人という名前が

トークアプリに表示されていた。






「えっ？！なんでっ…？！」





北「だってもう俺たち、友達じゃん？」






そう言って北人くんは、ニコッと笑う。








友達？！


芸能人と、この私が？！





「いやいやっ！ダメですってば！！」




北「騙してたわけじゃないって、証拠。これで信じて

くれる？」



「う…、」







そんなこと言われたら、信じるしかなくなる…。

３２→←３０

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す