nostalgic

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私は担任の先生の最後の忠告に

走りながら振り返り、返事をした。









彼に会えなくなってから、この坂を登るスピードはか

なり早くなった気がする。






もしかしたら今日はいるかもしれない、すれ違いにな

ったら嫌だからと、はやる気持ちが足にかかる負荷を

麻痺させているんじゃないかって思う。






だけどやっぱり彼の後ろ姿は無くて、まず一回目の落

胆が襲う。







二回目の落胆は、１７時を知らせる音楽が鳴った時。







彼のタイムリミットはいつももっと早かったけれど、

今は自分の中でその時間までに来なかったら…と、な

んとなく制限時間を設けたから。








そして今日もその音楽が街中に響き渡り、私はため息

ひとつつく。






「はぁ…。」





何度この落胆と悲しみを味えば、私は気が済むんだろ

う。





さっきユズも言いかけた、「きっともう彼は来ない」

という事実と結果。





それでも彼との最後の時間を思い出せば、この結果を

信じたくない自分と、このまま彼を信じたい自分がい

る。







「忠犬ハチ公かって…。」




ほんと、そう。



このままじゃ、その記録を塗り替える勢いだ。









ふぅと、小さく息を吐きながら立ち上がった時だっ

た。





？「待って！！」






声のする方を見ると息をきらして、相変わらずガラの

悪い制服姿の司くん…じゃなくて、北人くんが立って

いた。







「あ…、」



北「良かった…間に合って…。」






北人くんは呼吸を整えながら、こちらにゆっくりと歩

み寄って来る。







北「ここ最近ずっと来れないのを楓士雄が…、」


「…もう知ってます、北人くん。」







北「えっ…、」









北人くんの話を遮って、私は彼の足先を見つめながら

言った。







「この前…知りました…。本当の二人は芸能人で、学

生なんかじゃない…。」





そこでやっと北人くんを見れば、彼はもともと大きい

目をさらに大きくしていた。








「楽しかったですか…？田舎者を騙せて…。」






彼に会えないもどかしさからか、北人くんに八つ当た

りのように言ってしまう。






北人くんは何も悪くないのに…。





北「ごめん…、騙してたつもりはないんだ。ただこれ

には理由があって…。」






だけど北人くんはその続きを言わずに、言葉を濁すば

かり。

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