nostalgic

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ユズ「ちょっと、A！

どうしたのよっ？！」




ユズは私の腕を揺さぶり、心配している顔。





「さっきの人…、楓士雄くんだったかも…。」




ユズ「えっ…？どいうこと？」





私は自分の携帯を取り出して、インターネットで二人

の本当の名前を打ち込む。






そして全然ヤンキーじゃない二人の写真をタップし

て、ユズの顔の前にその画面を差し出した。







ユズ「えっ…これって…、」





「楓士雄くん…じゃなくて、川村壱馬くんだったかも

しれない…。」





ユズ「えっ…、えぇえぇーっ？！！！！」





ユズはこれでもかってくらい、のけぞって目を見開い

ている。






朝、廊下でジロジロ見られた時よりも多くの人に見ら

れてることなんて、もう気にならない。





だって、そんなことより一刻も早く彼に会って確認し

たいから。








「ごめん私、もう行くねっ！」



ユズ「えっ？！ちょっと、Aっ？！」







ユズの引き止める声に手を振って、私は走り出した。






本当の彼がいる場所へ。









「はぁっ…はぁっ…はぁっ…、」





びゅんびゅんと耳元で風の音が聞こえるくらい走り、

一回も止まらずにあの坂を登りきった私は、膝に手を

ついて息を整える。






でも、自然と苦しくない。






たぶんそれは、芸能人だからとかそんなんじゃなく

て、好きな人に会えるから。





ただ、それだけ…。









私はゆっくりと楓士雄くん…いや、壱馬くんがいつも

いる場所に歩いて行く。









だけど、そこには彼の姿は無かった…。





「い…いない…？」








彼はいつも私より早く来ていて、お疲れって微笑んで

振り返る。




そこに駆け寄って、人一人分のスペースを空けて座る

の。





それで今日あったことや、たわいもない話をして彼の

タイムアウトの時間まで、目の前の景色を眺めながら

話すんだ。









それなのに…、彼はそこにいなかった。







もしかしたら、この前みたいに遅れて来るのかもしれ

ない！





司くん…ううん、北人くんも都合がつかなくて伝言を

お願いできなかったのかも。






もう少し…、もう少し待ってみよう。





きっと来るはずだから…。









そんな根拠も無い予想をして、自分に言い聞かせるよ

うに、いつもの場所に私は腰掛けた。

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