nostalgic

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「どんな感じだった…？」




父「どんなって…まぁ、見かけによらず普通の好青年

だったから驚いた記憶があるなぁ。ちゃんと釣りの受

け渡しもしっかりした感じで。」







やっぱり…。



やっぱり楓士雄くんは、どこか違う。




私の前だけじゃなくて、他の場所でもちゃんとしてる

ことが知れて、少しホッとした自分がいた。








父「だけど、それがどうした？」




ふいを突かれて、一番聞かれたくない質問が飛んで来

たので、私はまたも動揺する。






「えっ？！あっ…いや、この前その人がお店に入って

行くのが見えたから、お父さん大丈夫だったかな〜？

と思ってね！」





父「なーんだ！心配してくれてたのか！」




ガハハハ！と笑ったかと思うと、だったら店手伝え！

と手のひらを返されてしまい、私は逃げるようにパン

の入った袋を手に持ち、財布を出そうとすると、





母「今日はお母さんの奢り！」




「ありがと、お母さん！」






助け舟を出してくれたお母さんにお礼を言って、急い

でお店を出る。





その後ろではお父さんの、ったくもう！というため息

が聞こえた気がしたけれど、聞こえないフリをして走

り出した。









「はぁ…はぁ…はぁ…。」



久しぶりにこんなに走ったかもしれない。




梅雨の湿った空気の中、坂を登りきった時には自分の

額にじんわりと汗が滲んでいた。







そん中、いつもの場所になりつつある所に腰掛ける彼

の後ろ姿が視界に入った瞬間、謎の安堵感が私の心を

覆った。






「おっ…お待たせしました！」



壱「おつかれ。え、まさか走ってきたん？笑」





なるべく息を整えたつもりでも、すぐにバレてしまい

楓士雄くんは、ふっと笑った。






「だって…約束したから…。」




壱「ふっ。そうやったな、ごめんごめん。」






なんだか自分だけが必死に約束を守り抜こうしてたみ

たいで急に恥ずかしくなり、持っていた袋に力が入

る。





私、なに必死になっちゃってんだろ…。






「…これ！ちゃんと買ってきました。あと、お金も返

します。」






ズイッと彼の顔の前にカレーパンの入った袋と、使わ

なかった千円札を差し出す。






壱「お！サンキュー…って、いやさすがに年下に奢ら

せるわけには…。」





楓士雄くんは袋は受け取ったが、千円札は受け取らず

困った顔。

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