それは紙一重 (ページ10)

今日:10 hit、昨日:4 hit、合計:78,496 hit

１０ページ10

「夕方集合なんだから、自分で

起きなさいっ！」

まったくもう…と手帳を閉じた時、嘉くんの声が無か

ったことに気づき、前の席に座る嘉くんを窓越しに見

れば、片頬杖をついてボーッと外を眺めていた。

「嘉くん、大丈夫？」

と、横から前に座る嘉くんを覗き込むと振り返って、

嘉「えっ？あっ、うん。大丈夫だよ。」

微笑んだかと思うと、ふいっと、また窓の方を見てし

まった。

今日は疲れちゃった？

ここ最近、スケジュールつめつめだもんね…。

とりあえず、今はあんまり構わない方がいいのかな？

と思い、私もそれ以上は話しかけずに心の中で了承し

た。

ーマレーシアー

「わぁ～！！」
竜「ぅわぁ～！！」
力「ぅおぉ～！！」

嘉「修学旅行か。笑」

私たちはあれから無事にマレーシアに来ることがで

き、今はホテル近くにある有名なツインタワーを見上

げている。

マレーシアでの活動を終えて、限られた時間だけれ

ど、最終日の今日はみんなでプチ観光をした。

その締めに、夜に見るととても綺麗だと現地スタッフ

から聞いた、このツインタワーの真下で、首が痛くな

るほど見上げて大興奮の私たち。

「すごい幻想的…。」

パシャパシャと写真を撮るみんなの横で、肉眼に焼き

付けるように見ていたら、嘉くんも隣に来て見上げ

る。

嘉「なんか実感湧かないや。」

「なにが？」

嘉「自分たちが世界進出に、一歩踏み出したんだな～

って。」

嘉くんの横顔は、ビルの光と少し湿っぽい空気に包ま

れてなんだか、艶っぽい。

「そうだね～。一生懸命突っ走ってる時って、現実味

がないものなのかもねっ。でも…私はずっとみんなの

側で、みんなを支えて世界に飛び出す姿を見届けて行

きたいなって、改めて今日思ったよ。」

見ている人は同じ人間で日本と変わりはないんだけ

ど、やっぱり違うと感じてしまい私は正直、ドキドキ

ヒヤヒヤだった。

彼等がどういう風に見えるだろうか、曲を聴いてパフ

ォーマンスを見て、何を思うんだろうとか…考えたら

キリがないんだけど、それでもその空気に飲み込まれ

ず胸を張ってカメラや、ステージに立つ七人を見てど

こまでもついて行こう、って改めて思えたんだ。