それは紙一重 (ページ44)

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リリースイベントの追加を営業担当の

上司に報告された時は、

正直喜べなかった。

ほぼ休み無しで、海外や国内を飛び回り彼らの疲労は

顔には出さないものの、ピークに達して来ていたこと

に私は気づいていた。

それなのに…その事実を言えないまま嘉くんの体調を

崩す結果に…。

もしあの時、私が強く反対していたらまた違っていた

かもしれないのに…。

「だからこの結果になったのは、私たち運営側の責

任。嘉くんは自分を責めないで。それと…メンバーや

ファンの方たちは嘉くんの元気な姿を早く見たいって

絶対思ってるよ！むしろ待ちわびてるって！」

ほら、見てみ？！と私は自分の携帯でバリボのSNS画

面を見せる。

そこにはたくさんのファンの方たちからの嘉くんを心

配する声や、早く復帰を願う声が。

「それに見てよ、これ。」

と、お次はメール画面を開けば個人的にメンバーか

ら、どうだった？や、大丈夫だったの？と連絡が入っ

ている。

「だから合わせる顔ないなんて、言わないで？みんな

嘉くんを待ってるんだから。」

嘉「…Aがマネージャーで良かったって心から思

うよ。ありがとう。」

嘉くんは俯いていた顔を上げて、そう言った。

「さっ！帰ろ！こんな所にいたら、また先生に注意さ

れちゃう。笑

帰ってたくさん寝て、休まなきゃっ。」

立ち上がった私に、嘉くんに呼びかけられたので振り

返ると、

嘉「手も繋いでてくれてありがとう。」

マスクの上の目は悪戯な目をしている。

熱もあったし寝ぼけてたしで、絶対記憶にないと思っ

てたのに！！

「おっ、覚えてたの？！てゆうか、それは嘉くんから

で…、」

嘉「Aの手、意外と小さいんだね。」

嘉くんは私の言葉を遮って立ち上がり、帰るよ～、と

先に歩いて行った。

「…意外とってなによ…。どうせ見た目によらずです

よ～だ…。」

先に歩いて行った大きな背中に、私は小声で投げかけ

た。