それは紙一重 (ページ42)

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慣れ親しんだ地と家族の元を離れて、

東京という大都会のしかも、芸能界という

特殊な世界に飛び込んで手探りな状態の中、

夢のためにと踏ん張ったり、突き進んできた。

そんな中、こうやって体調を崩した時は誰かにいても

らいたいものだろう。

ましてや私なんて、マネージャーという立場もあって

姉的存在にしか思われていないだろうし…。

そう思ったら意外と冷静になれて、嘉くんの寝顔の横

に座り込み、ギュッと手を握り直した。

「大丈夫。ここにいるから、安心して寝てね。」

嘉「ん…。」

それから、繋いでない方の手で頬杖をついて帰るタイ

ミングを見計らっていたはずなのに…、

竜「…いっ。おいっ、A！」

「へ…？」

肩を叩かれた衝撃で目を開ければ、目の前にはパジャ

マらしきスウェットを着た竜太がしゃがんでいた。

頬杖をついていたはずの私は、いつのまにかベットに

うなだれていて、しっかりと目を握ったままスースー

と気持ち良さそうに寝ている嘉くんの顔がすぐ近くに

あって、勢いよく上体を起こす。

「ヤバイ！私も寝ちゃってた…。」

竜「おいおい、手なんか繋いじゃってまるで風邪引い

た子供と、それを心配する母親みたいやん。」

少し声のボリュームを下げて、苦笑いする竜太。

だよね…と、呟くけれどその本心は少しショックを受

けた。

だって自分だけじゃなくて、周りからもそう見られて

るとは…。

竜「そろそろ準備しないとだけど…今日の静岡は無理

そうっしょ？」

竜太は嘉くんを見て言い、私はチラッと腕時計を見れ

ば、時刻はもうブランチの時間帯。

「そうだね…。今日病院行かなきゃいけないのもある

し…。」

私も一回帰らなきゃ、と言って少しだけ名残惜しいけ

れど、嘉くんの手からするりと抜け出して玄関へ。

靴を履きながら、

「じゃぁ嘉くんにメールも入れておくけど、もし起き

たらお昼までに迎えに来るって伝えておいて？」

竜「わかった。あのさ、」

「んー？」

足元に置いておいた鞄を肩にかけながら、竜太を見れ

ば玄関の壁に半身寄り掛かって、言葉を濁す。

竜「あー…その…、」

「どしたの？」

いつもふざけてばかりいる竜太が、神妙な面持ちで珍

しい…。