それは紙一重 (ページ41)

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「お…お邪魔しまーす…。」

同居している竜太はまだ帰って来ていない

はずなのに、反射的に言ってしまう。

嘉くんはフラフラと自分の部屋に入るなり、ベットに

ボフンッと横になる。

「ちょっと、嘉くん！着替えなきゃダメだよ！」

嘉「んー…分かってる…。」

すぐに横になりたいくらい辛いのはすごく分かるけ

ど、熱のせいで汗もかいてるだろうし…。

私はキョロキョロと辺りを見回して着替えを探せば、

ベットの足元に少し乱雑に畳まれたスウェットが目に

入る。

「嘉くん、これに着替えて？じゃないと、治らない

よ？」

嘉「ん…ありがと…。」

ムクッと起き上がったかと思うと、私の手からスウェ

ットを受け取るなり上半身の洋服をガバッと脱ぎ出し

た嘉くん。

「ちょっ…？！」

私は勢いよく嘉くんに背を向けて見ないようにしたけ

れど、完璧には間に合わず、少し鍛えられた色白の上

半身があらわになり、女の本能が変に騒ぎ出す。

どどどどうしよう？！

嘉くんの…嘉くんの上半身を見てしまった！！

だけどまたもやベットに音を立てて横になったのが耳

に入り、ゆっくりと振り向けば、嘉くんはスースーと

寝息をたていた。

私はもう一度、嘉くんのおでこに手を当ててみれば少

し冷たく感じたので掛け布団をしっかりとかけてあげ

た瞬間、

嘉「うー…喉痛い…。」

「喉か…。なんか飲む？」

嘉「…大丈夫…。でも◯△□×…、」

最後の方が聞き取れなくて、ベットの端に少し手をつ

いて、

「ごめん、なんて言ったかわからなかっ…えっ…、」

その手を、彼の大きな白い手が包み込んだ。

次から次へとどうしよう！！！

私…、嘉くんと手を…手を繋いでいる！！

こんな状況なのに、心臓がドキドキと鳴りながら口か

ら出て来ちゃいそう。

嘉「…側に…いて…。」

目を瞑ったままの嘉くんは、熱のせいでなのか少し息

遣いが荒い。

その姿を見てドキドキと恋する乙女の気持ちは、いっ

きに冷静になる。

それはなぜかって、嘉くんが上京してきているから。